「ふ、んくっ…」
「声を出すな、…」
それは、いつも通りの行為。
クラトスが私たちを裏切って、離れていってからずっと続く、秘密の行為。
083:彼が去った後に
彼は決まって、私が一人で休んでいるときに現れた。
裏切りの後初めて彼を見たときは、思わず泣いてしまったのをよく覚えている。
どうしてあなたは、私の前に現れるの?
もう私たちは敵同士なんだと、自分に強く強く言い聞かせてきたのに。
もう二度と心を開かないと、決めたはずなのに。
クラトスの姿は、その意思を一瞬で砕いてしまった。
口もききたくなかったし、何か話したとしても嫌味を言ってやろうと思っていたのに…
次から次へと涙が溢れるのを、止められなかった。
それから彼は何も言わずに私を抱き締めて、キスをした。
どうして敵同志なのに、そんなことをするの?
私の気持ちを裏切ったのに、またそうやって優しくするの?
意味が、分からなかった。
言葉は、ない。
まるで何も言わせまいとするかのように、彼はくちづけだけを繰り返して
強く強く、私を抱いた。
彼が私たちの許を離れる前のように、身体を重ねた。
声は、出さない。
声を出してしまうと近くで休んでいる誰かに気付かれてしまうかもしれないし、
何より声に出して彼を呼ぶことによって…彼に対する気持ちが、より一層
強くなって、しまいそうで。
彼は敵だと
何度も自分に言い聞かせる。
だけどそれとは裏腹に、心は彼を求めていた。
本当は今でも好きなのかもしれない
…ううん、好きなのに。
裏切られた事実が、どうしようもなく悲しい。
それでも彼は、会いに来る。
そのせいで、未だに私は彼への想いを断ち切れないでいた。
いつしか彼が会いに来るのを、心の底で楽しみにしている私がいて。
休憩を取ることになると、私は率先して仲間たちから離れるようになった。
初めの内は心配してくれていた仲間も、今ではもういつものこと、として扱ってくれるようになった。
ぼんやりと木に凭れ掛かりながら、彼を待つ。
来るか来ないかも、わからないのに。
がさり、と音がする。
その音に、私は息を飲む。
そしてその音の方向を見ると、そこには…
「クラ、トス…」
彼が、いた。
「はぁ、んっ…」
「っ…」
秘密裏に進められるこの行為。
逢瀬…と呼んでいいものかもわからないけれど、
この彼との逢瀬は本当に僅かな時間しかない。
だからこそ、少しでも彼を感じようと必死に腕を伸ばす。
「あ…ああ…!」
「っ…!」
そして今日も、終わりを迎える。
こうして彼と会うことによって、関係を続けていることによって、
私もロイドたちを裏切っているような背徳感と…
そして彼との時間が終わってしまったという、そんな気持ちが。
私の心の中で、交差する。
ほっとするような、悲しいような、複雑な瞬間。
「…もう行かなければ」
「…そう」
さよなら、もなければ
またね、もない
いつもの別れ。
「次はいつ会えるの」なんて口にしたら、
今の関係ですら、壊れてしまいそうで。
会いたくないのに、会いたくて。
矛盾だらけの、私の心。
「…」
「…死ぬなよ」
そう一言だけ言い残して、彼は去っていく。
青いきれいな羽をふわり、と出して
遠い空へと、彼は帰っていく。
彼が去った後は、いつもとてつもない虚無感に襲われる。
彼の姿が見えなくなってなお、私はぼんやりと空を見続けた。
とっくにその姿は、空の青に吸い込まれてしまったというのに。
…たまに、すべては夢だったんじゃないかとすら思う。
行為の跡も何も、残ってはいない。
「…っ」
涙が一筋、頬を伝った。
彼が飛んでいった青い空の下で、私は自分の肩を抱いて泣いた。
…彼が去った後に残るのは、涙の跡、それだけ。
fin.
テイルズオブシンフォニアよりクラトスさんで。
シンフォ夢もホントはちゃんとやりたいのですが他にも色々あるのでそうもいかずorz
とりあえずお題で、ちょこちょこクラトスやらリーガルを取り扱っていけたら、な、と…!
っていうかコレは何ですかホントに夢ですかコノヤロー!(爆)
名前変換一箇所だし、クラトス台詞少ないし、暗いし(これは割りといつもですか)…
ほ、ほんとに済みませんでしたー!!汗
05.11.15 Mia