027:それでも僕は





















「セブルス〜っ!」





…またか。

背後から元気よく大声で叫ばれた声に、セブルスはそう思いながら小さく溜息をついた。





「待ってよセブルスってば」

「…何か用か」





聞こえない振りをして歩き続けようとした彼だったが、彼女にローブを掴まれそれも叶わず、仕方なく足を止めて振り返った。

振り返るとそこには、息を切らせた少女が一人。



彼の所属するスリザリン寮とあまり仲の良くない、グリフィンドール所属の生徒だ。

この所彼女は、セブルスを見ると所構わず大きな声で呼び止め、駆け寄ってくる。

初めはそんな彼女が煩わしく、かなり冷たく当たっていたのだったが…

最近では冷たく突き放しても彼女には何の効果もないと諦めた彼は仕方なく相手にするようになっていた。





「次、魔法薬学でしょ?一緒に教室行こうよ」





セブルスが足を止めて振り返った事に満足した彼女は、彼のローブを掴むその手を放すと

手に持っていた鍋を抱え直してにっこり笑ってそう言った。

セブルスが向かっていたのは、次の魔法薬学の授業の教室。

魔法薬学は数少ないスリザリンとグリフィンドールの合同授業の一つだ。

それ故にスリザリン生であるセブルスに好意を抱いているは、授業の前に彼を捕まえ、

教室まで二人で話せる時間を作ろうと狙っていたのだった。





「どうして僕がお前なんかと一緒に行かなければならないんだ」

「えー?だって私たち、恋人同…」

「いつ!誰が!!そんな関係になったと言うんだ!!」

「もー、セブったら照れ屋さんなんだから!」

「人の話を聞け!!」





が言いかけた言葉を、セブルスはとてつもない勢いで遮った。

“自称”セブルスの恋人は、セブルスの反論に「えー?」と何か言いたげな表情をする。

東洋人ながらとても可愛らしいとホグワーツで評判ののその可愛らしい表情も、彼にとっては無意味。

一度止められながらも構わずまた話し出そうとするに、額に青筋を浮かべながらセブルスは怒鳴った。





「だってただでさえ寮が違うせいでセブルスと一緒に居られる時間が少ないんだから、

 こういう些細な時間だって大事にしなきゃ。そう思わない?」

「…だから、僕は一度たりともとそのような関係になった覚えはないと言っているんだが」





一向に噛み合わない彼女との会話に、セブルスはハァ、と頭を抑えて溜息をつく。

しかしやはり彼の迷惑そうな態度など微塵も気にしないは、彼の隣で嬉しそうに微笑んだ。





「さ、行こ?授業始まっちゃうよ」

「…」





にっこりと微笑むの笑顔から逃げるように、セブルスはぷいと元の進行方向を向き直しすたすたと歩き出した。

「あ、待ってよ〜!」と彼の後を追うからは見えなかったが、セブルスの顔は微かに赤くなっていた。










「最近どー?楽しい?」

「何がだ」

「んー、生活全般?」





大勢の生徒が次の授業の教室に向けて行き交う中、は早足で歩くセブルスと並びながら

様々な事を問い掛ける。





「人の顔を見る度に所構わず大声で呼んで駆け寄ってくる非常識で恥ずかしい奴や、

 事あるごとにくだらない悪戯を仕掛けてくるレベルの低い集団がいなければな」





冷ややかな嫌味も込めて言ったつもりの言葉だったが、当のは「そっかー、セブルスも色々と大変だね〜」などと

あまり気にする様子もなく、笑って聞いている。

セブルスは理解できなかった。

どうして彼女は、自分のような者にこうしてつきまとうのか。

彼女と同じグリフィンドール生のあの憎らしいポッターやブラックをはじめ、彼女に好意を寄せている者はたくさんいるはずだ。

それなのにどうして彼女は、大して共通点もなく話し相手にすらならないような自分にこうして毎回近寄ってくるのだろう。

自分自身に対する周りの評価や、自分の性格はわかっている。

それだけに、彼はいつも彼女が来る度にわけがわからなくなっていた。





「あ、でもこの間私ジェームズ達にお仕置きしておいたからね!

 結構効いてたみたいだから、多分しばらくは手を出してこないと思うよ」

「…なぁ」

「っ…なになに??」





相変わらず笑顔で話し続けるに、セブルスは静かに口を開いた。

いつもが一方的に話している状態なので、彼の方から話しかけてくることなど滅多になかった。

それ故に彼女は驚いた、しかしとても嬉しそうな表情でセブルスを見上げた。





「…どうしてお前は、いつも僕につきまとう」

「―――――――え…」





その言葉には一瞬驚いた。

だがすぐに笑顔に戻し、いつものように明るく答えようとした。





「だって、セブルスが好きだから」

「どうして僕が好きなんだ?僕なんかを」

「どうしてって…理由が必要?好きなものは好きなんだもの」

「…理解できないな」





いつもとは少し雰囲気の違うセブルスに、は戸惑っていた。

いつもの迷惑そうな雰囲気ではなく、少し温度の下がったような雰囲気。

「…理解できないな」

そう言って自分から顔を逸らした彼の横顔に、どこか暗い影が見えたような気がした。





「ねぇ、セブルス。その…もしかして、私のこと………嫌いに、なった………?」





それっきり無言になったセブルスにいよいよ危機感を感じたは、恐る恐るそう話し掛けた。

気まずい沈黙が、魔法薬学の教室へと向かう二人の間に立ち込める。

話し掛けても尚無言を貫くセブルスに、それまで必死に早足のセブルスについて歩いていたの足が止まった。





「…ごめん」

「…」

「迷惑、だったよね…」

「……?」





俯き、肩を震わせて小さく呟くようにそう言った彼女に、今度はセブルスが驚いた。

今までどんな嫌味を言っても突き放しても、それを気にする様子もなくまたすぐに明るい笑顔で自分に話しかけてくる

その彼女が、今にも泣きそうな様子でいる。





「…そうだな、お前という奴はいつも人の迷惑を顧みずいつでもどこでも僕の後をついてくるし…」

「っ…」

「何度言っても、それを止めようとはしない」

「…」

「いい加減、うんざりする」

「っ…ごめんなさ…」





淡々とそう言うセブルスに、の瞳からついに涙が溢れた。

だがそれでもセブルスに泣き顔を見られまいと、俯いたまま指で涙を拭う。

震える声でごめんと繰り返すに、セブルスは息を大きく吐いて最後にこう言った。





「…それでも」

「え…?」

「それでも僕は…、お前が好きだ」

「今…なんて…」





セブルスの言葉に、は思わず自分の耳を疑った。

俯いていた顔を上げ、涙で濡れた瞳でセブルスを見つめる。





「…同じことは何度も言わない。聞こえていただろう」

「ど…して…?私、嫌われてるかと…」

「最初は煩いだけだった」





それなのに、日が経つにつれの声を聞かない日があるとどこか落胆している自分がいて。

が声を掛けてくると、煩わしい反面口元が緩んでいる自分がいて。

ああそうか、自分は彼女に惚れてしまったんだと気付いたのは最近の事だった。





「全く、やられたよ





さっきまでの険しい表情とは打って変わって、まだ誰にも見せた事のないような顔で微笑むセブルス。





「セブ…ルス…」

「…泣くなよ。まだ悲しいのか?」

「ううん、違う…嬉しくて…」





未だに目から涙を溢れさせているに、セブルスは困ったようにそう言った。

無理もない。

女の子に泣かれた経験などあるはずもないのだから。





「じゃあ笑え」

「…え…」

「僕はお前の泣いている顔より、笑っている顔の方が好きだからな」

「ありがと…セブルス」

「っわ…!?」





涙に濡れた顔で微笑むと、はセブルスの胸に飛び込んだ。

話している間に授業の時間になってしまっていたため、そんな二人を邪魔するものはなにもなかった。

を受け止めたセブルスは一応周りを見渡して誰もいないのを確認すると、の唇にそっと口付けた。





「…とりあえず、中庭にでも行こう。そんな顔じゃ授業に出られないだろう?」





そう言ってすぐに彼が手を引いて歩き出したのは、照れ隠しのため。















fin.


お題ナンバー27、「それでも僕は」です。

セブたーん!!偽者でごめんなさ…!!!(滝汗)

とりあえずハリー・ポッターより学生セブルス。

最近黒男タンもそうだけど学生書くの楽しくて仕方ないよ…(笑)

とりあえず今度は教授も書きたいです。お題って便利。


05.12.13 Mia