001.わたしのなまえ
。
。
それが私が親からもらった、最初のもの。
「」
小さい頃、よくお父さんが優しい声でそう呼んで、私の頭を撫でてくれた。
大きなその手は、私をいつも安心させた。
「」
優しかった時のお母さんも、そう呼んでくれた。
だけどそれも、遠い昔のお話。
そして、今は。
私の名前を呼ぶ声は、遥か遠い。
聞こえているようで、でもはっきりとは聞こえなくて。
微かな風に乗って聞こえてくるような、私の名前。
誰が呼んでるの?
私を、探してくれているの?
私は知らない間に、深い森に迷い込んでいたみたい。
鬱蒼とした木々が、私を呼ぶ声を阻む。
私は声を上げたいのに
「私はここにいるよ」って、叫びたいのに
どうしてだろう、声が出なかった
「・・・、・・・」
ここだよ
「」
ここにいるよ
「・・・」
私を呼ぶ、その声は――――――――――――――・・・
「せん・・・せ・・・?」
「駄目だろう?こんな所で転寝したら。風邪引くぞ」
気がつけば私は森の中ではなく、診療室にいた。
体が痛い。
どうやら私は先生の仕事机に突っ伏したまま、眠っていたらしい。
その声に導かれて顔を上げれば、
そこにはには優しい笑みを浮かべる先生の顔。
暖かい体と心地良い匂いに気づくと、
私の背中には、先生のジャケットが掛けられていた。
「いつ・・・帰ってきたの」
「たった今さ。誰もいないのかと思ったら、おまえさんがこんな所で眠っていたから驚いたよ」
先生は今日まで、遠い外国に行っていた。
勿論、依頼されたお仕事・・・手術をするため。
今回は私もピノコちゃんもおいてけぼり。
寂しかった。
あなたがいないだけで、まるで世界に一人ぼっちにされたような気分だった。
「っ・・・?!」
私は思い切り、先生に抱きついていた。
その体をぎゅっと抱きしめ、感触を確かめた。
「名前、呼んで?」
「え・・・?」
「お願い」
抱きついて目も合わせないまま、私はそう言った。
きっと声は、震えていただろう。
先生は何も言わないまま、私の体をきつく抱きしめ返した。
「・・・」
「っ・・・」
「・・・?」
突然泣き出した私に、先生は困ったように私の名前を呼んだ。
ねぇお願い
やめないで、もっと私の名前を呼んで?
私が今ここにいるって、信じさせ欲しいの
「・・・―――・・・」
「・・・」
「・・・おまえは今、俺の腕の中にいる・・・どこへも行かせやしない」
「!」
「大丈夫だ、」
どうしてだろう、何も言ってないのに・・・
まるで先生は私の心の中を見透かしたように、私が欲しかった言葉を、くれた。
その声はそう・・・夢で聞いたものと同じ。
死ぬほど待ち望んだ、あなたの声。
「愛してる、」
そうして最後に、キスをくれた。
「って・・・良い名前だな」
「え・・・?」
「世界で一番、良い名前だ」
「本当?ねぇ先生、本当?」
「ああ、当たり前じゃないか」
「・・・」
“・・・この名前ね、お母さんがつけてくれたんだよ”
そう言って彼女は、しあわせそうに笑った。
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お題挑戦一つ目!「わたしのなまえ」消化です。
暗ッ・・・(死)
ヒロインさんちょっと寝ぼけ中につき甘えモード。
2005.06.24 Mia