あああ、もう

勉強・勉強・勉強

私の人生、こんなつまらないものに費やしてばーっかり!!




















ゆ び き り




















「…で、俺の所に来たってわけか」

「せーんーせー…」





私藤原は、心に癒しを…正確には、受験勉強からエスケープする為に、

大好きな先生の書斎に遊びに来てしまいました。

と言っても、ドアを開けて廊下を数歩歩いて、またドアを開けるだけだけど。

今私は、三年生…つまり、受験生。

来年の春に受験を控えた私は、毎日が勉強漬け。

今年になってからそれなりにずーっと頑張ってはきたけど…もうそろそろ、限界です。





「もうねー…嫌。ほんとに何もかもが」





思いっきり溜息をつきながら、書斎の机に手をついて私は頭を垂れた。

それを先生は、「全く、おまえさんは」って感じの表情で眺めている。





「今年に入ってから何回目かな、その台詞は」

「…だって」





春の学力テストが終わったと思えば中間テスト。

中間テストが終わったと思えばどっかの教育会社が主催する学力テスト。

それが終わったと思えばすぐに期末テスト。

夏休みに入れば、夏期講習夏期講習判定テスト。


何回でも言ってやる。

もう嫌!!!





の気持ちも分かるが…今は我慢するしか、ないだろう?」

「だからその我慢が、限界なんですー…」





難しーい医学部の試験に合格して、更に難しい国家試験にも合格した先生にすれば、

私の受験なんてそりゃあ全然比べ物にならないくらい大したことじゃないんだろうけど。

成績人並みな普通の女子学生の私の頭は、もう限界。

キャパシティが、いっぱいいっぱいなのです。





「私の中の日本史は江戸時代で止まってるよ…」

「せめて明治まで覚えなさい、

「無理、絶対無理」





よくわからない会話を繰り返す私と先生。

いや、きっと勉強で疲れきってる私の頭がよくわかってないだけなんだろうけどね…





「仕方ないな…散歩にでも行くか?気分転換くらいにはなるだろう」

「え…ほんと?やったー!!」

「やれやれ…現金な奴だな」





そんな私を見かねたのか、先生が立ち上がってそう言った。

先生のその言葉に、私は思わず嬉しくて声を上げる。

そしたら先生は、こつんと私の頭を軽く叩いて、笑ってくれた。





「…手、繋いでこうね」

「ああ、わかってるよ」





それだけで、とても嬉しかった。

最近の私のビタミン剤は、先生のその笑顔だから。















「うわぁ、いい風ー…」





家を出た私たちは、丘を下ったところにある海岸の遊歩道を、手を繋いで歩いていた。

久し振りの恋人らしい時間に、私は少しだけ照れくさくなって先生よりもちょっと早足になる。

秋の気配を纏った涼しい風が、そんな私の頬を撫でた。





「さすがに十月ともなると、人も少ないな」





夏場は大勢のカップルや家族連れで賑わうこの海岸も、先生の言葉どおり

秋も半ばの時期になると人はほとんどいなかった。

遊歩道を歩きながらすれ違ったのも、ほんの二、三人だ。

夏は楽しそうな人の声が溢れていた海も、今は静かな波の音と鴎の声だけが響いている。





「気持ちいい…ね、先生」

「ああ、そうだな」





響く波の音が、私の聴覚を支配して。

ヒーリング効果、って奴だろうか。

心がすごく、落ち着くのを感じた。





「…さっきまでぐちゃぐちゃしてた頭の中が、嘘みたい」

「それは良かった」





部屋で机に向かっていた時は、よくわかんない数式や年号、単語の活用形なんかが

ぐるぐる回っていた頭の中も、すごくクリアになって。

ようやく私は、心の中がちょっとだけ軽くなったような気がした。





「ありがとね、先生。…そしてごめんなさい」

?」

「我侭言って、こんな所に連れ出しちゃって」





頭がすっきりしたついでに、私は先生に謝った。

さっきの自分が少し恥ずかしくて、繋いでいた右手に思わず力が篭る。

だけど先生は、そんな私に…優しく、微笑んでくれた。





「気にするな、と出掛けられて、俺も嬉しかったし」

「…ありがとう、先生」





私の右手を包む、先生の大きな手がすごく温かくて。

そこから伝わる体温が、私の鼓動を速めているような気がした。

…大好き。

私は先生が、世界で一番大好きだ。

この手をずっと、離したくないの。





「――――――――――今はすごく、辛いかもしれないが」





それから先生は、急に立ち止まって口を開いた。





「あと少しだけ、頑張れば…楽しい事が、きっとを待ってる」

「うん…」

「だから、な?」





その次の言葉なんてなくたって、先生が私に何を伝えたいのかすぐにわかった。

大丈夫、私は―――――――――――――――…

先生がいてくれるから、まだ少しだけ、頑張れる。

…ううん、もっともっと、頑張れる。





「…うん!」

「いい子だ」





そう笑顔で返事をすると、先生はほっとしたように私を抱き寄せて、頭にキスをくれた。

さっきまでの潮の匂いが消えて、さっきまでの景色が急に黒に変わって

私は先生に、包まれる。





「ね、私…頑張るから、受かったらご褒美、くれる?」

「勿論。何がいい?

「うーん…」





そう言われて考えてみるけど、なかなか思いつかない。

ご褒美って言ったって、別に何か特別欲しいモノがあるわけでもないから。

先生に抱き締められたまま、私はしばらく考える。

それから私は、とってもいいことを思いついた。





「じゃあ」

「ん?」

「先生を一日ずーっと独占してても良いよ権が、欲しい!」

「なっ…?」





私がそう言うと、先生は最初驚いた顔をしてそれからすぐに可笑しそうに笑い出した。





「ぷっ…一体何なんだい、その権利は?」

「えー?そのまんまでしょ…先生を一日中、独占できる権利だよ」

「全く…は本当に面白い事を思いつくな」





笑わないでよね、と言ったら先生は「悪い悪い」って言いながらもまだ可笑しそうに

私の頭上で笑っている。

ひどいんだから、先生ってば。

私は真剣に、考えたのにさ。





「そんなのなくたって、俺はと一緒にいると思うんだけどな?」

「そうじゃなくて…一日中何にもしないでただ先生と一緒に居たいの!

 誰にも、何にも邪魔されず…一日だけで、いいから」

「―――――――――…わかった、約束な」





そう言うと、先生は私の体を離してさっきまで繋いでいた右手を取った。

そして自分の右手を出し、“指きりげんまん”の形で、小指と小指を絡める。

きゅ、と指に力が込められて…一緒に“思い”も、込められた。





「来年は…もっともっと、一緒にいられるよね?」

が望むのなら、いくらでも」





強い風が吹いて、ばさりと音がして…視界の端で、黒が揺れた。

先生のこの笑顔を独占できるのなら、もうちょっとだけ…もうちょっとだけ、

頑張ってみようかな?と思った午後でした。


桜が咲いたら、また二人で来ようね?

ピンク色の花びらが舞う、この場所へ―――――――――――――








fin.


77000hitキリリク、秋葉さまに捧ぐ受験生ヒロインでBJ夢でした!

受験なんて激しく懐かしいです…付属校だったので大学受験はしなかったのですが、

高三時は毎月毎月鬼のようにテストがあって死に掛けた思い出があります。笑

先生とお散歩したい!!と勝手な欲望を滾らせて書いてしまいました(爆)。

秋葉さま、リク誠に有難う御座いましたvv

77000hit、本当に有難う御座います!これからもどうぞ宜しくお願い致しますm(__)m


2005.10.05 Mia