「じゃーんけーん」
「「「ぽん」」」
ワールドワイド21
「勝ったー!」
「くっ…」
「あー!またの勝ちよのさー!」
夜、ホテルの一室に響く勝者の声。
そして落胆の声を上げるのは、敗者二名。
三人が興じているのは、ここ最近毎晩決まって行われる行為…ベッドを賭けた、真剣勝負。
「いやーん私ってば最強ーv」
そう言って右手の拳を掲げるのは。
「また負けた…」
そう言って右手を力無いVサインにしたままうなだれるブラック・ジャック。
「うぅ…今日も広いベッドはお預けよのさ…」
同じく小さな右手をVの形に保ったまま、恨めしそうな視線でを見るピノコ。
そう、三人が真剣になってやっていたのはじゃんけん。
自らの拳のみを武器に、グー、チョキ、パーという極めて少ない選択肢で勝敗の全てを決する万国共通の勝負法だ。
なぜ三人はこうも大真面目にじゃんけんをするのか。
事の発端は、数日前に遡る…。
*
「…先生だけズルくない?」
「…言われてみえば」
残された写真の人物を追うため、またBJの命を狙う謎の組織から身を隠すために外国を転々とすブラック・ジャック、、ピノコの三人。
ホテル暮らしも慣れてきたある日の夜、はある重大な事に気が付いた。
それは…。
「先生だけいっつも、ベッド一人で使ってる」
「…はぁ?」
「そうよのさ…ピノコたちは毎晩ふたりでひとつのベッドで寝てゆのにぃい!」
「ズルいわ!卑怯よ!!」
三人が泊まっている部屋は、ベッドが二つのツインルーム。
人数分には足りていない。
そこで部屋割りならぬベッド割りは、男性のブラックジャックが一人で一つ、そして女性のとピノコが二人で一つのベッドを使用していた。
誰が決めたでもなく自然にこうなって今まで寝泊まりしてきたが、ホテル暮らしに余裕が出てきたことでがこれはおかしいと言い出したのだった。
「そんな事を言ったって、他に選択肢はないじゃないか」
「男だからとか女だからとかって事は、今更関係ないわ」
「関係ないってお前…」
「別に私たち、一緒に寝るのが嫌になったとかじゃないの。ほーらこんなに仲良し!」
「なかよちー!」
呆気にとられるブラック・ジャックを余所に、とピノコは仲良しをアピールするためか
肩を組んでにっこり笑う。
「でもね!!」
今までの笑顔はどこに行ったのか、一転してはバン、とサイドテーブルに勢いよく手を突き、身を乗り出して熱弁した。
「たまには一人で伸び伸び寝たいの!寝返りうーち放題ヨロレイヒーしたいの!!」
「(ヨ、ヨロレイヒー…?)」
の勢いと割りと意味不明な言葉に押されるブラック・ジャック。
その向かいのベッドではそんな彼を余所に、ピノコがの言葉に盛大に頷いていた。
(大体お前さんたち、今までも十分伸び伸び寝てるじゃないか…)
二人の掛け布団を夜中に幾度となく直してやるブラック・ジャックの心の声は、二人に届くはずもなかった。
「…と言うわけで」
「言うわけで…?(の前に、まだ結論を出すまでには至っていない気がするんだが…)」
「今夜から、一人ベッド争奪戦!ドッキリ真剣勝負☆じゃんけん大会を開催しまーす!!」
「ちまーちゅ!」
「はぁあ!?」
高らかに開会宣言をするとピノコを前に、思わず間抜けな声を上げてしまうブラック・ジャック。
「ルールは簡単。シンプルに一回勝負で勝者一名がベッド一台ご当選、敗者二名は二人で一台シェアです」
「ま、待て!もし俺とお前が負けたらどうなるんだ?さすがに大人二人じゃ狭いだろう」
「確かにそうなるかも知んないけどそれはお互いの運がなかったという事で次に賭けよう!」
「…!(はっ…待てよ、これはチャンスかもしれない…!)」
キュピーンと親指を立てるを前に、ブラックジャックはある事に気が付いた。
(久し振りにに触れるチャンスじゃないか…!!)
思えば日本を発ってから恋人らしい触れ合いを全くと言っていい程していなかったブラック・ジャックと。
それはこの旅の目的やピノコというもう一人の同行者もいる事もあり仕方のない事で、
あえて口に出す事もなかったが、それは健全な成人男性としてはなかなか辛いことだった。
(もしかしてこれは、まさか…誘っているのか!?…!!)
…欲求不満の成人男性の思考は臨界点に達したようだ。
「よし、やるぞ!」
「そう来なくっちゃ!じゃあ、せーのっ」
「「「さーいしょーはグー!じゃんけんぽんっ」」」
「…」←グー
「…」←グー
「っ…やった…!」←パー
歓喜の声を上げたのは、発案者。
白い手のひらを目一杯広げ、天に翳していた。
「まさか、こんな事が…!」
「くやちぃ〜…!」
反対にうなだれているのは、ブラック・ジャックとピノコ。
握りしめた拳をわなわなと震わせ、心底悔しそうな目でそれを見つめていた。
「天は私に味方した…そういう事でこのベッドゲットー!!おやすみ二人とも!」
「こんな…こんな事があっていいはずがない…」
「はぁ〜あちたはじぇったい勝ちゅわのよ…」
そんなこんなで夜は更け、次の日もそのまた次の日も…
「よっし私の勝ち!」
「くそ!」
「うちょ〜!!また!?」
の勝利の声だけが、深夜のホテルに響くのだった。
*
「毎晩毎晩…結局の一人勝ちじゃないか。何かおかしくないか?」
「う〜ん…ちょういわえぇば」
連夜の敗戦に、疑問を抱くブラック・ジャック。
現時点で全戦負けなしのに、何か秘密があるのではないか…?と。
「そんな事言ったって、こんなじゃんけんで小細工はしようがないじゃない」
「確かにそうだが…」
事前に何か仕掛けのあるゲームではないし、見る限り遅出しなどはしていない。
大体仕掛けをしようにも、この勝負に使うのは己の拳のみだ。
だがそれでも、の勝利に納得がいかないブラック・ジャック。
「本当に、何もないのか!?」
「やだなぁ、ないってば」
詰め寄るブラック・ジャックに、にっこり笑顔で返す。
それじゃおやすみ、と今日もまた一人ベッドに潜り込む。
そんなを呆然と見て、仕方がないのでもう自分達も寝ようとベッドに入るブラック・ジャックとピノコだったが、
その後すぐに「あ」と思い出したようにひょっこりと顔を向けたの言葉に驚く事になる。
「ああ、でも強いて言えばピノコちゃんはじゃんけんを出す順番に、ある程度法則性があるわ」
「えぇっ!?」
そう言われて動揺するピノコ。
自分では全く無自覚(ブラック・ジャックも気付いていなかった)だったため、驚きを隠せない。
「そして先生は…」
「っ…」
の言葉を待ち、ごくりと唾を飲み込むブラック・ジャック。
ほんの数秒が何時間にも感じられる中、の形の整った薄い唇が開いた。
「…」
「(何だ…何なんだ…!?)」
「…やっぱやーめた」
「なっ」
なんとも拍子抜けするその言葉に、がっくりとするブラック・ジャック。
「だって言っちゃったら、私不利になっちゃうし」と言いながら笑う。
小悪魔の微笑み。
そんな言葉が似合う笑みを浮かべて、はそれじゃあおやすみ、と顔をまた元の方向に戻す。
「待て、!何でピノコには教えて俺には教えてくれないんだ?」
「べっつにー」
煮え切らない答えに、思わず自分のベッドから飛び降りての体を揺するブラック・ジャック。
自分とは逆の方向を向いて横になっていたを力ずくで自分の方に向かせ、何とか問い詰めようとする。
だがそんなブラック・ジャックを嫌がる様子もなく、は上から自分を見る彼をはっきりと見据え、小声でこう言った。
「だってピノコちゃんが勝ってくれなきゃ、つまんないでしょ?」
だから、ね と、今度は妖艶な笑みを浮かべる。
「…成る程、な」
「わかったら、おやすみ、先生」
ピノコが目を閉じて眠っているのを確認してから、は音を立てず軽くブラック・ジャックの唇に口付ける。
それを受け、ブラック・ジャックはようやく観念したように自分のベッドに戻ったのだった。
(さて、明日は誰が勝つかな…)
明日の勝負の行方は、まだ誰にも分からない。
end.
無駄に長いよーっていうか誰この人たちー!!(ひぃい)
とりあえず先生夢では珍しくギャグちっくに…そしたら全員別人になりましたorz
今回はブラック・ジャック21設定(って、特に以前と変わった所はないけど)で海外外遊中(遊んでません)な三人で。
最初からツインじゃなくて三人部屋取れよ!とか補助ベッドでも入れてもらえよ!って突っ込み話の方向で…!!
06.05.16 Mia