「キリコ、何せっかくこんないいホテル来たのに

 部屋に閉じこもってカッコつけて英語の新聞なんて読んでるのよ。

 どうせ読めてない癖に」

「なッおまッバカ、読めてるに決まってるじゃねぇか!」

「あっははーキリコが怒ったーv」

「五月蝿い!どっかその辺で遊んで来いッ!」















vacation with you.















夏、夏、夏。


私はキリコの仕事に引っ付いて、とある海外のリゾート地に来ています。

依頼主はどうやら相当な金持ちらしく、飛行機も宿泊場所もあっち持ち。

しかもまたこれが、良いホテルなんだなぁ。

キリコの仕事はあんまり好きじゃないけど…

今回はまぁ、キリコ様様って感じかな。

青い空、青い海、眩しい太陽…ああ、幸せっ!!


…なのに、コイツときたら。





「馬鹿言ってんじゃないわよこの馬鹿っ!!」

「なッ!!」





折角のリゾートだってのに、部屋に篭ってばっかりで・・・

あんたは一体何しに来たのよーっ!!!!





(仕事だ!!byキリコ)





「こんなリゾートに来たのに部屋に閉じこもるなんて論外!

 さ、プール行くよ!」

「はぁ!?」





私がそう言うと、キリコは心底嫌そうな顔をして新聞から顔を上げた。

何よその顔…ムカつくわね、キリコの癖に。

でも折角のリゾートなので、とりあえず私は我慢して話を続けた。





「はぁ?、じゃない、はぁ?じゃ!何で外に出ようとか思わないの?

 だからそんなにゲッソリ青白い顔してるのよ」

「生まれつきだ!」

「とにかく、一緒にプール行こ!」





そう言って私はキリコのシャツを引っ張る。

私がこんなに誘ってるのに、キリコは立ち上がる気配も見せなかった。

なんて奴。

彼女に常夏のリゾートで暇を持て余させるなんて!

…喧嘩売ってるんですかコノヤロー。

だったら買ってやるわ。

絶対に一緒に、行ってやるんだから。





「私を一人で行かせるって言うの?」

「行きたきゃ勝手に行けばいいだろうが」

「ナンパされちゃったらどうしよ〜う…やだ、怖ーい☆」





ピクッ





…掛かった。

今の私の一言に、一瞬だけれどもキリコはその顔に眉根を寄せる。

そんなキリコに気付かれないように、私は小さくガッツポーズを作った。





「外国の人って積極的だし…一夏の恋?情熱の恋?」





ピクピクッ





「あっ、確かブラック・ジャック先生もこっちに仕事で来てるのよね!

 誘ってみようかなぁ〜、一緒にプール行きませんか、ってv」





プチッ





「オイ、!」

「…はい?」

「水着用意しろ…プール行くぞ」

「やった!」





何かが切れた音がして、ついにキリコが勢いよくガタン、とイスを飛ばして立ち上がった。

そして彼の口から出た言葉は、「プール行くぞ」。

やっとキリコがその気になってくれたので、私はジャンプしてキリコに抱きついた。

「おい、離れろ」と言いながらも突き放すようなことはしない。

…ちょっと嬉しい。


それにしてもキリコって、扱いやすい。

大抵はブラック・ジャック先生の名前を出したらOKを出すんだもん。

ありがと、ブラック・ジャック先生。いつも助かってます。















「ったく…自分から誘っておいた癖に遅いんだよアイツは」

「キーリコー!」

「遅いぞ、着替えに何分時間かけてやが―――――――――…」

「…キリコ?」

「っ…、お前…」

「似合う?」

「…」





今日この日の為に用意した水着は、白地にピンクの水玉のビキニ。

頑張って、寄せて上げました。

その甲斐あって、キリコは…固まってる。





「ねぇキリコ、似合う?」

「…良いんじゃないか」

「ふっ…ありがと」





キリコの不器用な褒め言葉。

直接的な言い回しではないけれど、キリコにしては十分、だね。

そして私は、妙に居心地の悪そうな顔をしているキリコの手を引いて、歩き出した。





「さっ、行こ!」

「あ、コラ引っ張るな…」

「ってかキリコ細ッ」





細いのは前からもよーく知ってるんだけどね、うん…

だけど水着を着たらその細い体を隠すものが何もなくなるから、

余計細く見える。

むしろ細いって言うかガリガリ?やつれてる?

うん、そんな感じ。

下手したら私より、軽いんじゃないかと思うくらい…

まぁ、身長があるからそんな事はないんだろうけど。(と、思いたい)





「余計な事は言わなくていい」

「え、だって本気で細いし。どうしたらそんなに痩せられるのよ」

「…余計なことを言うのはこの口か?」

「ん、う!」





引っ張っていたはずのキリコの手に逆に引っ張り返されて、

足が止まる。

いきなり何するのよ、と文句を言ってやろうと思った瞬間…

キリコがまたいきなり、キスしてきた。





「なッ、何するのよいきなり!馬鹿!」

「馬鹿って…良いだろ、別に」

「良くないーっ!何処だと思ってるの、人の目を気にしてよ!!」





ここは高級リゾートホテルのプールです、キリコさん。

他にもお客さんはたくさん居ます。

…あ〜〜〜もう!!!

TPOを考えろっての、医者の癖に!!

っていうか、キリコの癖に。





「ここは日本じゃないんだぜ?キスの一つや二つ、誰も気にしないさ」

「〜〜〜っ…早く行くよっ、キリコ!」

「はいはい」





気障ったらしくそう言うキリコに、顔をそむけて、私はまたキリコの手を引いて歩き出した。

…妙に大人しくついて来るキリコが、なんだかすっごい憎らしい。















「…浮輪かよ、

「ほっ、放っといて!」

「フッ…ガキだな」

「うーるーさーいー!!」





プールにいざ入ろう!とした時に、キリコが呆れたように後ろから声をかけた。

…そう、確かに私は浮輪装備。

確かに泳げないのもあるけど…浮輪に掴まって水に体を預けて浮いてると…

すっごく気持ち良いんだから。

わかってないわね、キリコ。





「んじゃ、早速…わぁ、気持ちいい」





梯子に足をかけながら、ゆっくりとプールに入る。

暑い気温のお陰で、水がとっても気持ち良い。





「ほら早く、キリコも入りなよ」

「おう」

「いらっしゃーいv」

「っわ、引っ張るな、馬鹿…ッ!?」





キリコがプールに入ったのを確認すると、私はキリコの腕を引いた。

その弾みで、キリコが私に正面から抱きつくような体勢になる。

私よりもかなり背の高いキリコだから、私は上から見下ろされる感じ。

きっと視線は、この日の為に頑張った胸の谷間に釘付け、だと思う。

…勿論、わざとだよ?





「…今、やらしいこと考えてたでしょ?」





そしてわざと意地悪に笑って、キリコに聞いてやる。

馬鹿野郎、と言って言葉に詰まるキリコ。

…可愛い。

そんな事を考えてたらそれが分かったのか、キリコは拗ねたような表情を見せた。





「キーリコ、ほら拗ねてないで、浮輪の紐引っ張ってよ?」

「なッ…何で俺が!」

「だってキリコ引っ張ってくれないと前に進まないし。

 水中の重力って地上の重力の何分の一とかいうし、軽い軽い!」

「…六分の一だ。っつーか、あんまり関係ないと思うけどな」

「ね、早く早く!」

「チッ…仕方ねぇな」





そう言うと、キリコは私のピンク色の浮輪の紐を掴んで

プールの奥の方へと進んでいった。

見えるのは、眩しい太陽と青い空、そしてキリコの大きな背中。

…柄にもなく、胸がきゅんとなった。

思わず手を伸ばして、抱きついてしまいたくなるほどに。

その背中は、魅力的だった。







「ん?んッ!」

「―――――――…」

「ふぅ、んぁ――――!!」





人気のないところまで来て止まったかと思うと、キリコは突然振り向いて

私の口をキスで塞いだ。

本日二度目の、不意打ちのキスだった。





「はぁっ、っ――――――…」






何度も重ねられるキスで、私はもう酸欠状態になる。

視線で訴えてようやく唇が離れた頃には、私の体からは力が抜けていた。

浮輪にはまって、キリコの体に掴まっているのが精一杯だった。





「…後で覚悟しとけよ?」

「…は、何言って―――――…」

「プールに付き合ってやったんだ、礼はたっぷりしてもらうぜ」

「っ、…馬鹿」

「うるさい」





そう言って笑うキリコが、妙に格好良くて…

悪口言っても悪態ついても、やっぱりキリコが好きなんだ、と思った。

非日常の中の夏休み。

キリコと一緒だったら、何処でも楽しいけどさ。

でも初めて一緒に来た遠い国で作った思い出は

日焼けの跡が消えても、ずっとずっと私の中に、残ってる。


消えない一夏の思い出。

大切な思い出。

また来年もどこかで、大切な思い出が出来ますように!

二人で一緒に、歩いてこうね。















fin.

63000hitで光淋さまに捧ぐ、キリコ夢・恋人設定で一緒にプールでした!

アアア、キリコ久しく書いてなかったから口調が…口調が…別人…orz

って言うかどうして私が書くとキリコの出てくる夢はギャグテイスト入ってしまうんだろう。

も、申し訳御座いません光淋さまー…!!

苦情返品常時可ですので、何なりとどうぞ…!(滝汗)

63000hit、有難う御座いましたvv


05.07.19 Mia