目に見えなくても、触れられなくても

僕らはたしかに赤い糸で結ばれてる















運命















「―――――――そして、お姫様は迎えに来てくれた王子様と

 末永く幸せに暮らしましたとさ」

「ロマンチック〜vv運命の王子様よのさ!」





絵本の中のお姫様は、いつも幸せな未来が待っている。

悪い魔女や魔物から颯爽と助けてくれる、王子様と一緒に。

在り来たりな話だけど、女の子ならいつだって誰だって憧れる“シンデレラストーリー”

もピノコも勿論例外じゃなく、読み終えた本を閉じるとうっとりと目を閉じた。





「いいなぁ、ピノコもいつか素敵なドレスを着て、先生と…」

「何不自由なく暮らしたいよね〜…」

「…」





それぞれの求める“未来”に思いを馳せる二人を横目に、向かいの一人掛け用ソファで

難しそうな医学書を読んでいたブラック・ジャックは小さく溜息をついていた。





「ピノコ、もうそろそろ遅い。寝る時間じゃないのか?」

「えーっ!ちぇっかくもっと女の子のロマンについてと語り合おうと思ったのにーい!」





時計を見たブラック・ジャックは、ピノコの顔を見てもう寝るようにと言った。

しかし本を読み終えたばかりのピノコは、がっかりとした表情でそれを拒否する。





「そんなもの、明日でも出来るだろう?ほら、早く寝るんだ。明日の朝起きれなくても知らないぞ」

「むー…わかったわのよ。おやちゅみなちゃーい」

「おやすみ、ピノコちゃん」

「おやすみ」





ブラック・ジャックにそう言われて、少しまだ不満そうな顔をしながらもソファから降り、

ピノコはゆっくりとした足取りでリビングを後にした。

ぱちぱちと暖炉の火が燃え、リビングにはとブラック・ジャックの二人だけが残される。





「別にまだ無理に寝せなくても良かったんじゃない?明日は日曜日だし」





ピノコの足音が遠ざかると、はそれまで読んでいた本をテーブルに置きながら

ブラック・ジャックにそう言った。

時計の針は午後9時を回ったところ。

高校生のにしてみれば、確かにまだ眠るには早い時間帯だった。





「…駄目だ、一度夜更かしすると癖になるからな。それに――――――――」

「?」

「こうやってできないだろう」





医学書を閉じ、自分が座っていた椅子から立ち上がると、

ブラック・ジャックは今までピノコが座っていた場所…の隣に腰掛けると彼女を抱き寄せた。

突然の事には驚くが、素直にそのまま身を預ける。

ブラック・ジャックはそんなを見ながら、温かい体温と愛する人の匂いに、落ち着いたような表情を見せた。





「しかし、なんだってあんな本を」

「ああ、さっきの本?素敵なお話でしょ?図書館で借りてきたの」





ブラック・ジャックの問い掛けに、は抱き締められたままふふっと笑ってそう答えた。





「女の子はいつだって、王子様が迎えに来てくれるのを待ってるんだから」

「…」

「あ、どうせバカにするんだから何も言わなくていいからねっ」





ブラック・ジャックが何か言おうとして開きかけた口を、が人差し指を当てて止める。

そんなに、まだ言う前から決め付けなくてもいいじゃないか、とブラック・ジャックは苦笑した。





「まったくうちのお姫様は、夢を見るのが得意だね」

「むー…言わなくていいって言ったのに」

「それが可愛いって言ってるんだけどな?」





そう言うとブラック・ジャックは自分の唇の上で止まってたの手を優しく掴むとそれを下に持っていき、

自由になったその唇での唇を塞いだ。

優しく重ねられるキスに、は自分の手を覆っているブラック・ジャックの大きな手からするりと抜けさせ、

もっととせがむかのように彼の背中に手を回して二人の距離を詰めた。

ようやく唇が離れると、二人は照れたように笑いあった。





「…うちの王子様は、強引なんだか優しいんだか」

「ん?何か言ったかい?」

「ううん、何も?」





聞こえなかった振りをして問うブラック・ジャックに、もまた何もなかった振りをして

悪戯っぽく笑ってそう答える。

彼女が何も言わなかった振りをするのなら、とブラック・ジャックもまた「そうか」と

あえてそれ以上問わず、もう一度、今度は額に軽くキスを落とした。





「ねぇ、先生は運命って信じる?」

「また唐突だな」

「いいの。で、信じる?」





額のキスをくすぐったそうに受けながら、は思いついたようにそう訊いた。

ブラック・ジャックは彼女のその突然の問い――――――もう彼にとっては慣れたものであったが――――――に、

笑ってそう言った。





「そうだな…運命は自分で変えられるもの、ではあると思う」

「決められた運命なら変えていく、ってこと?」

「ああ」

「んー…じゃあ、運命の“人”だったら?」





のその問いに、ブラック・ジャックは少し考えた素振りを見せる。

そしてしばらく間を置いてから、ゆっくりと彼は口を開いた。





「…俺はを運命の人だと信じるし、そしてそれは俺が選んだ運命の人でもある」





の目を真っ直ぐ見つめ、そう言葉を紡ぐ。





「…どういうこと?」

の解釈に任せるよ」





少し不思議そうな顔をするに、ブラック・ジャックは彼女の頭を柔らかく撫でてそう答える。

そしてはその言葉を聞いて少し考えるが、すぐに笑顔を浮かべた。





「うん、わかったよ」

「そうか」





そうしてまた笑いあう、二人。

きっとの思い描くシンデレラストーリーは、この先の未来に待っている。

―――――その夜寄り添って眠る二人の指先は、赤いリボンが絡められていた。















fin.

ひっさしぶりのB・J夢…!(滝汗)

トリノ五輪モーグル見ながら書きました。(どうでもいい)

久し振りのリハビリ作みたいな癖してバレンタインフリー夢です。

こんなので良ければ、どうぞお持ち帰りください。(06年2月いっぱいまで)

何かもう恥ずかしいこと書きすぎてアレですがー…!orz


06.02.12 Mia