「暇だねぇ…」
「…そうだな」
「しりとりでもする?それか懐かしのマジカルバナナとか」
「二人でしりとりか…不毛だな」
とブラック・ジャックの二人は、ロック達の組織に拉致されて
このイカロス島の研究施設の一室に閉じ込められ、眠れぬ夜を過ごしていた。
テレビもラジオもないこの小さな部屋にあるのは簡素なベッドと机くらいのもので、
見えるものと言えば、天井の角に空いた小さな天窓から覗く月だけ。
そんな部屋の片隅で、二人は寄り添い合いながら時間を持て余していた。
「先生はまだマシよ、昼間はまだ自由に施設内を歩き回れるんだから。
私なんてトイレ以外この部屋から出してもらえないんだよ」
不満そうにが言う。
「…済まないな、お前さんまで巻き込んじまって」
が彼と一緒にイカロス島まで来たのは、全くの偶然だった。
本当はブラック・ジャックだけを連れてくるはずだったのだが、
偶然その場に居合わせたを、拉致の早期発覚を嫌ったロックがそのまま一緒に連れてきたのだった。
そして島に着いてからは、ブラック・ジャックはサタンの感染患者の治療に当たり、
はほぼずっとこの小さな部屋に閉じこめられていた。
ロック達の目的が自分だけであったのにまで危険なこの場所に連れてきてしまったことに、
ブラック・ジャックは謝った。
「いいよ謝らなくて、先生がさらわれて家で不安な気持ちで待ってる方が嫌だもん。
それよりこうして一緒にいられる方が、私的には安心」
「…」
こてん、と自分にもたれ掛かるに、愛しさを感じるブラック・ジャック。
そっとその髪を撫で、肩に掛かる一房を手ですくうと小さく口づけた。
「…ここは空がきれいだね」
見上げた先には、小さな天窓。
その四角い枠の中に、絵画のように美しく月とたくさんの星が収まっていた。
二人が住む岬の家からも星はきれいに見えるが、このイカロス島から見る星空は、また違って見えた。
不気味なほどに静まり返り、真っ暗な夜空に光る星。
月は寄り添い、その輝きを静かに見守っているようだった。
「もう30回くらい流れ星見ちゃったよ。願い事も尽きちゃったって感じ」
「街灯や他の建物がないからな、ここは。天体観測には持ってこいだ」
「うん…でも、なんか怖いね。どうしてかな、月も星も、いつもと同じはずなのに」
「…」
ぎゅっと自分の腕を掴むを、ブラック・ジャックは安心させるようにより近くに抱き寄せる。
自分たちはどこにいるのか。
ブラック・ジャックが奴らに酷い目に遭わされないだろうか。
無事に家に帰れるのか。
一人残されたピノコが心配してるんじゃないだろうか。
ある程度はこういった状況に慣れているブラック・ジャックと違って、の不安は際限なく広がった。
昼間一人でこの部屋に閉じ込められ、不安と緊張に押し潰されそうになりながら過ごした。
それでも彼を想い、耐えて夜を待った。
夜になり、ブラック・ジャックが部屋に戻っている間だけが唯一安心できる時間だった。
「大丈夫だ、は必ず俺がここから連れて帰るから」
「…ん」
抱き寄せたの耳元でそう囁いて、そのまま耳に口づけると、は顔を赤くして頷いた。
そしてそのまま二人はベッドに倒れ込んだ。
「…するの?」
「駄目か?」
こんな時にこんな場所で求められると思ってもみなかったは、思わずそう訊いた。
訊かれた当人のブラック・ジャックは、「駄目か?」と訊きながらも有無を言わせぬ
微笑を浮かべ、の頬に優しく手をかける。
「…停電が起きると人口が増える理由、わかった気がするなぁ」
苦笑混じりにそう言うと、は返事の代わりにキスを送った。
大丈夫、俺が君を必ずここから連れ出してみせるから。
この夜に、あの星に、約束する。
だから君だけには笑っていてほしい。
心はいつも、側にいるから。
fin.
Inspired by ミーア・キャンベル "Quiet Night C.E.73"
今更映画設定夢ですほんと今更ですいません…!!
2006.11.06 Mia Fujiwara