嬉しいことも、楽しいことも。

全部全部、繋がってるんだ












L I N K




















「…」

「…」





ある日の午後、私は向かい合わせに座る先生をじっと観察していた。


食事を終え、居間のソファでくつろぐ先生。

その視線の先には新聞。

文字を読むために伏せられた目を飾る長い睫毛が、とてもきれいだ。

これが“大人の色気”ってやつなのかしら。



そこから視線を下ろすと、首筋がしっかりした体へと繋がっていた。

私がいきなり「先生っv」と抱きついていっても、よろめく事なくしっかりと受けとめてくれる胸と腕。

温かい胸越しに聴こえるその鼓動が大好き。



そして新聞を持つ手は、大きくてごつごつ骨ばっている。

長い指と清潔に切り揃えられた爪先。

たくさんの人を救うその手で、先生はいつも私の髪を優しく撫でてくれる。





「…?」

「──────へ…あ、えっ?」

「その…俺の顔に何か付いてるか?」





…と、そこで。

先生をじっと観察していた所で、それに気付いたらしい先生が私の名前を呼んだ。

突然呼ばれたから、間抜けな声を上げちゃったじゃない。

その声に呼ばれて先生の顔に視線を戻すと、じっと見られていて居心地が悪かったのか

先生は苦笑いまじりの顔で私を見ている。





「や、何も付いてないけど」

「なら…どうしてさっきからずっと俺の事を見てたんだい?」

「…それは、えと─────…って言うか、気付いてたんだ」

「当然」





にあんなに熱い視線を送られたらな」と、冗談めかして言う先生。

さっきからずっと見てたのがバレてたみたいで、今度は私が何だか居心地悪いような気分になった。





「先生がかっこいいなーって思って見てただけだよ」

「俺が?」

「うん。それでその上、大人だなぁって」





かっこいい。

うん、超かっこいい。

同じクラスの男子とは比べ物にならないほど、先生は大人でかっこいいんだもん。

いつ見ても、そう思う。





「やめてくれよ、からかうのは」

「からかう?私が?」





先生は苦笑混じりにそう言うけど、私は本気。





「すっごい真面目に言ってるんだけど、私」

「…それはどうも、





真っ直ぐ先生の目を見てそう言うと、先生はまた困ったように笑ってそう答えた。

なーんか素っ気ない返事だなぁ…。

せっかくほんとの事を言ったのに、そんなに反応薄いとちょっと寂しい。





「…おいで、





わたしがむっとした表情をしているのに気付いたのか、先生はふっと笑って、私を呼び寄せた。

新聞をテーブルに置いて、空いた手でぽんぽん、と太股を叩いている。

その事で先生が“どこに”来い、と言っているのかすぐに理解できた。





「ほら、早く」





そうやって笑顔を向けられると、私が「やだ」なんて言えないのを知ってるんだ…。

…ズルイ。





「…先生のばか」

「はいはい」





その笑顔に逆らえなくて、でも素直に行くのも何だか悔しくて。

だから、私は思ってもいないような言葉を口にしながら、先生の右膝の上に腰を下ろした。

先生もこういう時に私が素直になれないのをいい加減わかってるのか、笑ったままそれを受け入れる。





「…重くない?足痺れちゃうよ」

「全然」





そう言って、先生は一気に近くなった私のおでこにキスをした。

顔を上げて先生を見てみると、すぐ近くに先生の顔がある。





「キスしていいかい?」

「何で訊くの?」

「一応、レディの許可を貰ってからの方が良いかと思って」

「…駄目って言っても、するクセに」

「そりゃそうだ」





そう言ってははっと笑うと、先生は私にキスをした。

今度はおでこじゃなく、唇に。

優しいキスは、コーヒーの味がした。

…そう言えば、テーブルの上にコーヒーカップが置いてあったのを思い出す。





(ブラックコーヒーはやっぱり苦…)





コーヒーにはミルク党な私は、密かにそんな事を思った。





「…甘い」





そして、先生は逆の事を思ったみたい。





「だってさっき、ココア飲んだもん」

「ああ、だからか」

「甘いの嫌い?」

「いや、好きだよ。特にお前さんのはね」





そう言って私の頬にもう一度キスをする先生。

柔らかい感触が、頬に触れた。





「…」

?」





照れくさくて何も言えない私に、先生は不思議そうに顔を覗きこんだ。

さっきまでずっと眺めていたその顔が、すぐ目の前にある。

その距離の近さに、私はますます何も言えず、赤くなった。





「ふっ…本当にお前さんは、可愛いな」





それから数秒私を見つめ、先生はそう言って微笑んだ。

そして空いていた右手でそっと髪に触れ、髪を指に絡ませて遊んでいる。





「…子供扱いはやだってば」

「子供扱いなんかしたつもりは一度もないんだがな?」





…嘘ばっかり。

さっきから、触れるだけのキスばかりで。

決してそれ以上、触れてこようとしないくせに。





「…ほんとにそう思うんなら――――――――――…」





そこまで口に出掛かって、私は慌てて口をつぐんだ。

本当に、そう思うなら。

どうして欲しい、なんて…たとえ心の中でそう思ったとしても、言えるはずない。





「…本当に、そう思うなら?」

「っ…!」





だけど先生は、そんな私の気持ちも全部見透かした上で。

いじわるに笑って、私にそう訊いた。

印象的なその瞳が、目を逸らすことを許してくれない。





「っ…何でもないもんっ!」

「そうかい?」

「あ…」





当たり前じゃない、と言いかけて私の口は塞がれた。

勿論、先生のキスで。





「ん…っ」





思いも寄らないタイミングでの口付けに、思わず私は驚いて体を堅くした。

見開いた目の先には、さっき以上に距離が近くなった先生がいた。





「…こうして欲しかったくせに」

「…違います…っ」

「意地っ張りだな、お前さんも」





どんなに否定しても、余裕の笑みで流される。

…ああ、こういう所も先生は大人なんだった。

そして先生は、何もなかったかのように先ほど絡めた髪の毛を、またくるくると回して遊ばせる。





「…楽しい?先生」

「ああ」

「ふぅん…」

「…?」





…先生が楽しいなら、もうそれでいいやって思ったんだ。

投げやり?

ううん、そんなんじゃない。

楽しいことや幸せは、共有できるってコト。










fin.

ごごごごごめんなさ…!!!
激遅くなってごめんなさい!!
その上超微妙でごめんなさい!!(死)
7800hit有難う御座いました!
さま、報告有難う御座いましたvv

05.11.29 Mia