「ン、こえ何かしや…あーっ、ーっ!」




















フィルムズ-魔法のアルバム-




















事の発端は、ピノコちゃんが掃除中にあるものを見つけた事だった。

よく晴れた日の日曜日、私達は家中の部屋と言う部屋を掃除していた。

リビング、ピノコちゃんの部屋、私の部屋…そして、先生の部屋も例外じゃなく。

最後に残った先生の部屋に、掃除機を手に私達は入った。

そして無駄なもののほとんどない先生の部屋を掃除しながら、ピノコちゃんが先生の机の引き出しから

古びたアルバムの様なものを見つけたのだった。





、見てよこえっ!」

「どうしたのピノコちゃん」





あんまりピノコちゃんが血相を変えてそう言うもんだから、

私はてっきり女の人の写真でも出て来たのかと思った。

まさか、先生に限って…!!

…いやでも人生いろいろだって島倉●代子も言ってるし…。

彼女からアルバムを受け取り、恐る恐る表紙を開く。

すると、そこから出てきたのは…










「なっ…何これっ………





 …………………………かっ、可愛いーっ!!」





私の目に映ったのは、古い写真に写る小さな男の子の写真。

大きな瞳と無邪気な笑顔がそれはもう可愛らしい、一人の男の子がそこに写っていた。





「…ねぇ、これってもしかしてもしかしなくても…」

「せっ、先生〜っ!?」





印象的な瞳、そして今も面影もあるその顔。

先生の部屋から出てきた、と言う事もあり…これは間違いなく、先生だ。

そんな先生の可愛い子供時代の写真に、思わずピノコちゃんと二人声をあげてしまう。





「いやーっ、超可愛いよ先生何これーっ!!」

「こんないいものピノコに隠ちてたなんて、先生ってばゆゆせないよのさ!」

「「可愛い〜っvv」」





可愛い、可愛すぎる。

これは犯罪級の可愛さだ。

普段はクールなブラック・ジャック先生だけに、こんなに満面の笑顔の写真を見てしまうと

何だかちょっといけないものを見てしまったような気分だった。

私とピノコちゃんは1ページ目の写真で一通り騒ぎ終ると、

それからすぐに興奮した気持ちを抑えてゆっくりとページを捲った。

パラ…と芯がある重いページが開き、また新しい写真が出てくる。





「わぁ…赤ちゃんよのさ!」

「赤ちゃんが先生で、こっちで抱っこしてるのがお母さんかな?わぁ〜美人…」





次のページに貼られていたのは、赤ちゃんの写真だった。

産まれたばかりの時の写真なのだろうか、産着にくるまった赤ちゃんが、

病院らしき所のベッドの上で若い女の人に抱かれて眠っていた。





「あはっ、見て見て、この写真!」

「きゃーっ、哺乳瓶握り締めたまま寝てるっ…可愛い…!」

「こっちのは泣いてるよのさ…」

「でもそれもまた…」

「「可愛い〜っvv」」





最早私達の口からは、「可愛いっ!!」以外の言葉は出なくなっていた。

ページを捲る度に、可愛い可愛いちっちゃい先生の写真が次から次へと出てくる。

最初に感じていた罪悪感の様なものはもうとっくに消えてしまっていて、

今はもうただただ出てくる写真を堪能していた。

それはピノコちゃんも同じらしく、隣で一緒になってアルバムを食い入るように見つめていた。





早くぅっ、次のページっ!!」

「うっ、うん!」





ピノコちゃんに急かされて、またページを捲っていく。

次に開いたページには、さっき開いていたページから少し成長した先生の写真が貼ってあった。





「ハイハイしてゆ〜v」

「うわぁ〜っ、その次はつかまり立ちしてる…んでその次のはちゃんと一人で立ってるよ〜v」





人の写真を見て、これ程楽しいと思った事はない。

今はあんなにかっこいい先生の、それはそれは可愛い頃の写真が詰まったアルバム。

も、持って帰りたい…!!





「次は…」

「今のが1歳だから、次は2歳かな〜♪」





アルバムの隅に、もうインクが滲んでしまった字で「黒男1歳」って書いてあったから、

きっと次は2歳のはず。

私はわくわくして、次のページを捲ろうとした。

そしてページの端に、手を掛けたその時…










「…、ピノコ?」





「「…え…」」





突然部屋に響いた聞き覚えのあるその声に、私達は一瞬ビクリと体を硬直させた。

低くて、時には甘くて時には威厳があって…

でも今は、地の底から響くような怖ーい声…

まさしく、この声は…!!





「せ…先生…?」

「おまえさん達…掃除してたんじゃなかったのか…?」

「そ…そえは…」

「休憩…そう、休憩!ねーっ、ピノコちゃんっ!」

「ねーっ!!」





恐る恐る振り向くと、そこにはやっぱり…入り口に肘をついて立っている先生がいた。

うわぁ、怖い顔っ…。





「たまたま机の中整理ちてたや出てきたんらもん…」

「あれ程人の机は勝手に開けるなと言っているだろう、ピノコっ!」

「せ、先生アルバムくらいでそんなに怒らなくてもいいじゃないですか…可愛い顔が台無しですよ?

 …あ、可愛いのはアルバムの方の先生だった」

も面白がって見てるんじゃない!さっさとしまえっ!」

「えーっ、やですよ折角こんな可愛いの見つけたのにーっ!」

「可愛いって言うな!!」





…今分かった。

先生は、照れてるんだ――――――――!!

あの、先生が!





「照れなくて良いですよーvさっ、先生も一緒に見ましょうよっ!」

「照れてないっ!

 …まったく、お前たちは面白いものを見つけるとすぐこれだ…。」





どうやら今の状態の私達には何を言っても無駄、と思ったのか、

先生は“はぁ――――…。”と肩を落として大きく溜息をつくと

私達が座り込んでいたベッドの前に椅子を引き寄せて腰を下ろした。





「わぁー、次のページも可愛いーvv」

「三輪車よのさ〜!」

「…。」





次のページには、スプーンを使って一生懸命ご飯を食べようとしている所だったり、

無邪気に三輪車を漕いでいたり…これまた可愛いちっちゃい先生が、たくさん。

私とピノコちゃんは嬉しそうに写真を見てるんだけど、やっぱり先生は恥ずかしいのか

私達から一歩距離を置き、丁寧にアルバムに貼られてある写真を眺めている。





「あっ、三輪車で転んでる。三輪車なのに」

「膝擦り剥いて泣いてゆ〜」

「…でも」

「「可愛い〜っvv」」

「(これだから嫌だったんだよ…。)」





ページを捲るたびに成長していく先生。

なんだかすっごい、微笑ましいなぁ。

そしてそれと同時に、寂しくもあった。

だってこんなに楽しそうに笑ってる先生、私は見たことなかったから。

この頃の彼には、特徴である顔の傷も、白い髪もない。

…そうして古い写真の中で笑う先生は、私の知らない先生だった。





「…あれ?」





そして7ページ目を見終わったところで、彼の成長は止まった。





「こえで終わりなの?先生」

「…ああ」





捲っても捲っても、写真はない。

アルバムの続きは、どこにも無かった。





「――――――――この次の年だよ、事故があったのは」

「え…」





不思議そうに見つめる私達に、先生は重い口を開いてそう言った。

事故というのは、言うまでもなく不発弾の爆発事故だろう。

先生の大事な人を奪って、そして先生の生き方を全て変えた事故。

今までこんなに笑っていたのに、それを全て壊してしまったのだ、たった一発の不発弾が。





「このアルバムは、母が作っていたんだ。俺が生まれてから、毎年1ページずつ。

 …だから、ここで終わりなんだ。作る人がいなくなったからね」





寂しそうな、だけどどこか懐かしそうな表情で話す先生。

その瞳は、二十年前とちっとも変わっていない。

…目の前のこの人は、間違いなく写真の中の人物だった。





「そっか…」

「ぐすっ…先生ぇ…」





その話を聞いて、部屋にひと時の静寂が訪れた。

私は目を伏せ、手の中のアルバムをじっと見つめた。

本の重さ以上にもっと大事なものが詰まっていて、とても重く感じた。










「…さ、湿っぽい話はこれで終わりだ。

 何だおまえさんたち、さっきはあんなに笑ってたのにそんな顔して」

「らってぇ…」





先生はそこまで話してからぱん、と手を叩くと、さっきまでと打って変わって

その顔に微笑を浮かべた。

それから椅子を立つを今度は私たちと同じようにベッドに腰掛け、「バカだな、何を泣いているんだいピノコは」と

涙を浮かべるピノコちゃんの頭を優しく撫でてやっている。





「…っ、そうだ!」

っ?」





そして私は、ある事を思いついた。

じっとアルバムの表紙を見つめていた視線を上げ、先生の顔を見た。





「続き、作ろ?アルバムの!」

「続き?」

「そう、続き。アルバムはね、続いていくものなの」





今からでも遅くはないはずだよ、消えてしまった時間を埋めるのは。

今までと、これからと。

このアルバムはここで終わるんじゃなくて、これからも続いていかなきゃいけないんだ。

何故か強く、心にそう思った。





「はいはいはーいっ、ピノコそえ賛成ーっ!」





すると、それまで泣いていたピノコちゃんがぱぁっと顔を輝かせて、

元気に手を上げてそう言った。





には敵わないよ、本当に」





そう言って、先生は笑う。





「…もしかして、嫌だったりする?」

「いや、嫌じゃない。―――――――――――――むしろ、嬉しいんだ」





その一言に、胸が熱くなった。





「愛してる、

「っ…」





そして彼は、ピノコちゃんには聞こえないよう、耳元でそう囁いた。

低くて甘い、私の大好きな声で。










+ + +










「…そう言えば三人で写真って、撮ったことなかったよね?」

「そうだな、そう言えば」

「待ってて、今カメラ持ってくるっ!」





今まで一度も一緒に写真を撮ったことがないことに、わたしは気が付いた。

そう言うと私は立ち上がり、急いで自分の部屋へと走る。

引き出しを開けて、カメラを取り出すとまた急いで先生の部屋に戻った。

まだあまり使ったことのない新しいカメラを、三脚がないので机の上に置いて、角度を調節した。





っ、ちゃんとフエームに入ってゆ?」

「うん、オッケー!それじゃ、セルフタイマー押すね!」





ベッドの上に先生が腰掛け、その膝の上にピノコちゃんが座った。

レンズを覗き込むと、上手い具合にちゃんとフレームに納まっている。

それを確認すると、私はセルフタイマーのスイッチを入れてシャッターボタンを押した。

赤いランプが点滅し始めて、数秒後にシャッターが切られる事を知らせていた。





早く早くっ」

「先生、ちゃんと笑ってね?」

「そーよ、初めての家族写真なんらから!」

「分かってるよ…」





ランプの点滅がより強くなる。

私は笑って、レンズを見た。

それから三秒後、カシャッと音がしてシャッターが切れた。

初めての三人での写真が、撮り終わる。





「先生、ちゃんと笑った?」

「さあ?」





ピノコちゃんの問い掛けに、先生は意地悪っぽく笑った。

それを聞いたピノコちゃんは、「ちゃんと笑うって約束ちたのにぃ!」と怒る。





「現像してのお楽しみ、ってとこだな」

「もー、先生ってば」





頬を膨らますピノコちゃんをツン、とつついて、先生は笑った。

今度は意地悪っぽくじゃなくて、本当に楽しそうに。

つられて私も、くすくすと笑ってしまった。

そう、写真は現像するから楽しみなの。


そして出来上がった写真を、一枚一枚新しいアルバムに貼っていこう。

いろんな場所で、いろんな表情で。

ずぅっと手を繋ぎながら、たくさんの私たちをフィルムに納めて。


そうしてゆっくり、魔法のアルバムを作っていこう。




















fin.

Inspired by BUMP OF CHICKEN"とっておきの唄"


何これ、長ッ…!(爆)

しかも先にキリリク消化しようぜMiaさんよう…orz

夕べ寝れなくてごろごろしてたらネタが浮かびました。

久々に一昨年の年末に放送したスペシャル四話のDVD見てたら、仔黒男タンが可愛すぎて…!!

とりあえず最初はギャグでもないけど甘系だろうと思って書いてたのに、

途中でシリアスに転向してるのは何故。ギャー…。

暗い人間でごめんなさい。こんなんでも感想頂けたら嬉しいですではッ!!(逃)


05.10.24 Mia<とっておきの唄>大好き。BUMPの唄で一番好き…☆;"。.+:*