「ただいま」

「お帰りなさい、先生」

「…ピノコは寝たのか?」

「うん…一時間くらい前まで、粘ってたんだけどね」

「参ったな…明日はしぼられそうだ」















あ な た が く れ た も の















ある日の深夜遅くに、ブラック・ジャックは帰宅した。

それを車の停まる音に気が付いて、玄関まで出迎える。

二人の一度だけ影が重なると、またすぐに離れて、居間へと向かったのだった。


ブラック・ジャックが、開口一番にピノコを気にするのには訳があった。

…それは、今日が三月十四日…ホワイトデーだったから。

先月の十四日のバレンタインデーに彼にチョコレートを渡したピノコは、

お返しをとても楽しみにしていたのだった。


しかし急に海外での仕事が入ってしまったブラック・ジャックは、

ホワイトデーの一週間ほど前から海外へ行ってしまい、

ようやく当日の深夜…今になって帰宅したのだった。










「大丈夫だよ…ちゃんと明日、渡すんでしょ?」

「ああ」










少し可笑しそうに、でもそれを抑えながら話すに、苦笑するブラック・ジャック。

ジャケットを脱ぎシャツの襟元を緩めると、疲れたようにどさり、とソファに腰を降ろした。

ふぅ、と息を吐き出して久々の我が家で落ち着くブラック・ジャックのすぐ隣に、も座った。










「おかえり先生…早く会いたかった」

「急で済まなかったな…俺がいない間、何かあったかい?」

「ううん、何も」










そう言いながらこてん、と体をもたれ掛けてきたを、

ブラック・ジャックはそのまま優しく抱き寄せた。

一週間ぶりのの体温、一週間ぶりのの匂い。

その全てを満喫しながら、ブラック・ジャックはの柔らかい髪の毛をそっと撫でて、キスをした。










「…けど、淋しかった。すっごい淋しかった」

「ごめんな」

「…“俺も”って、言ってくれないの?」










少し拗ねたような口調でそう言うに、ブラック・ジャックは思わずくすりと笑みを漏らした。

普段はしっかりしているように見えても、こういう所はまだまだ幼さが残る。

“女性”と“少女”が入り混じった彼女にすっかり惹き込まれてしまっていた事を、

改めてブラック・ジャックは実感した。










「…ああ、俺も淋しかったぜ?」

「なら、良かった」










ブラック・ジャックのその一言に、満足げな表情を見せた。










「どういう意味だい?」

「…私だけ淋しくて、先生は何とも思ってなかったら…それってもっと、淋しいじゃない」

「…そう、だな」

「先生も淋しかったんだよね?」

「ん?ああ」

「じゃあ、相思相愛、ってやつだ」

「まぁ、間違っちゃいないな」










ふふ、と可愛らしい笑顔を覗かせると、再びぎゅっとブラック・ジャックに抱きついた。

そのまましばらく、時間が経っていく。

自分に抱きついたまま動く気配のないに、ブラック・ジャックはどうかしたのだろうか、と

少し心配になる。










「?どうかしたか?」

「んーん…どうもしないよ」

「…いつもより随分と甘えただな、今日は」

「そんなことないよ…」

「そうかい?」










いつもよりも、心なしか細く見える背中。

『そんなことないよ』と言ったその声も、震えているように思えた。










「先生」

「ん?」


「一週間って、長いんだね」


「…――――――――ああ、長いさ」










一週間。

七日間。

168時間の、空白。

その期間は、不安が彼女を覆うには充分過ぎる時間だった。










「最近ずっと、先生と一緒にいたから…」

「…」

「離れている時間がこんなに辛いだなんて、思いもしなかったよ…?」

「…」










一緒に過ごす時間はこんなにも早く過ぎていくのに

どうして、どうして離れている時間は

あんなにもゆっくりと遅く、もどかしく感じるのだろう…?


時間の進む早さは、一定でしか ないのに











「先生ぇ、大好き…」

「ありがとう、―――――――」










ブラック・ジャックは彼女の名前を呼ぶと、何も言わずに口づけた。

“愛している”とでも、言うように…何度も何度も、キスをした。










「もっと…もっと、先生ぇ…」

「ん…」

「んぅ、っは、あ――――――――――」










重なる体温、響きあう声

一週間分のお互いの熱を、補い合った。










「…部屋、行くか」

「ん…行く…」










その声を聞くと、ブラック・ジャックは彼女を抱えて自室へと向かった。

居間に残された彼の荷物とジャケットは、放って置いたまま気にも掛けずに…

朝日が昇るまで、二人は部屋から出てこなかった。

時間を忘れて、時間を掛けて、二人は愛し合った。










あなたが教えてくれたのは、誰かを愛し愛される幸せだけじゃなかった

それ以上にどうしようもない辛さも、寂しさも、全部


だけど…それを初めて私にくれたのは、あなたでした。


天秤にかけたら揺ら揺らと釣り合ってしまうくらいの『愛』と『悲しみ』

でも、最後は絶対に『愛』に傾くよ

…私の気持ちとあなたの気持ちを、乗せるから。



















フィン。


今日はホワイトデーだからそれっぽいモノを書こうと思ってPCに向かってたら…

微妙にシリ…アス…?(汗)

テンションの低い夢ですね…アアア!(ノД`);"。.+:*

甘々にするつもりが、ビタースイートになってしまいました…す、済みません…!

自分的にはこのくらいの微妙にビターな感じも好きなのですが。

次の夢こそ甘々目指します…頑張ります…!!orz

一応バレンタイン夢もフリーにしてたのでこちらもフリーにします〜。

もしお気に召しましたら、お持ち帰りしてやってくださいませ。

その際はビビエスかなんかに一言、頂けたら嬉しいです。

フリー期間は3/14〜3/21までです。


2005.03.14 Mia