「お帰りなさい吉田先生、鈴」




「ああ、ただいま




「ちゃんと戸締りはしといたらしいな、









私北村と双子の兄の鈴が吉田先生に拾われて

小姓になってから、しばらく。




今日も先生は鈴だけを連れて、長州の人たちの会合へと出掛けていた。




別にそれに対して不満がある訳じゃないけど、

なんていうか、こう・・・




ちょっと、ほんのちょっとだけだけど・・・鈴が羨ましい。




だって鈴だけが小姓な訳じゃなにのに!




私だって吉田先生の小姓の筈なんだから。




そりゃあ私は女だし、鈴よりもほんの何分かだけ

遅く生まれてきた訳だけど・・・




だけど、私だってもっと先生と一緒にいたい。




先生はとてもやさしい人。




あの日私たちに言ってくれた言葉と、あの眼差しは今でも良く覚えていて・・・

たまに思い返しては、私たちの最初の目的を思い出させた。




・・・外に出る事の少ない私にとっては、吉田先生が全てだから

――――――あの人は優しすぎるから つい忘れそうになってしまう

壬生浪を討つという事を。




門の内側はとても静かで平穏な世界。




あの人のお世話をしながら帰りを待つこの現状も嫌じゃないけど・・・

(むしろささやかな幸せを感じてるけど)




やっぱり私も先生と一緒に外の世界を歩いてみたい。








「・・・?どうしたんだい、難しそうな顔をして」




「えっあっ!?・・・いえ、なんでもない・・・です」




「?変な奴、




「もう、鈴は黙ってて!」







ちょっと考えてただけのつもりだったのに、

私ってば顔に出てたらしく・・・うう、恥ずかしい。




鈴はともかく、吉田先生にそんな顔見られるなんてー!!




北村、一生の不覚。







「ははは・・・鈴、今日はもう休みなさい。ご苦労だったね」




「はい、先生」




「それから、




「は、はい!」




「私の部屋へ水を一杯持ってきてくれないか?

 少し飲みすぎてしまったようだ」



「承知しました、先生」




「夜遅くなってしまったのに済まないね。では頼んだよ」








そう言うと先生は自分の部屋へと戻っていった。




その姿を見送った鈴が、ちょっと“羨ましい”って感じで

チラリと横目で私を見る。



へへーん。




変わってなんかあげないもんね!







「・・・じゃあ俺、寝るから。お前も先生の邪魔しないで用が済んだら

 さっさと部屋戻れよ」




「鈴なんかに言われなくてもわかってるもんねー!さ、行ーこうっと♪

 ・・・おやすみ、鈴兄」




「・・おやすみ」







鈴兄って呼ぶのは、おやすみなさいを言う時だけ。




これはちっちゃいころから変わってないなぁ。




さ、そんな事より先生に頼まれた事をしなきゃね。




私は水を汲みに土間へ行き、そして先生の部屋へと向かった。








「失礼します先生、お水、お持ちしました」




「有り難う、入っておいで」



「はい」






そう先生の声に促されて、襖を開けた私は先生の部屋に足を踏み入れた。




先生は窓際に座り肘を窓の縁にかけ、月を眺めていた。




見事な満月が、先生の横顔を照らしている。







「こっちへおいで、・・・綺麗な月だ」




「・・・はい!」






私に言わせれば月よりも先生の方がよっぽど綺麗なんだけど・・・

先生が私を側に呼んでくれたので、顔がにやけそうになるのを堪えながらも近くへ行った。








「はい先生、お水」




「ああ、有り難う」







とりあえず私は最初の目的であった頼まれ事のお水を渡すと、

先生はそれを一気に飲み干した。






「本当に、綺麗・・・」




「そうだね」




「あっ私、お邪魔ですよね!失礼しま―――」






疲れている先生の邪魔をしてはいけないと思い、

私は慌てて立ち上がろうとした。




でも、それを・・・







、もう少し此処にいてくれないか?」




「え・・・」







私は一瞬現実を疑った。



立ち上がろうとした私を止めたのは、先生の左腕。



その手が・・・私の腕を掴んでいた。







「水を持ってきてくれ、と言うのは単なる口実だよ?」







鈴がまたいらぬ焼餅を妬いてしまうからね、と

端正なその顔に微笑を浮かべながら言う吉田先生。




・・・夢じゃ、ないよね!?




私が驚きその場に突っ立っていると、先生は掴んでいた私の腕を引いて、

自分の膝の上に私を乗せた。







「・・・先刻、何を考えていたんだい?」







やっぱりこの人はすごい。




あんな些細な事も見抜いていて、覚えててくれた。







「・・・///」





「ちゃんと言わなければわからないよ、?さ、言ってごらん」





「・・・ただ、先生がいつも・・・」





「?」





「・・・その、鈴だけを連れて歩くから・・・」







ああ、恥ずかしくて泣きそう・・・



先生、呆れてるかな?



私が余りに子供だから、我侭だから。



本当はこんな事、言うつもりじゃなかったのに!







「・・・






先生が私の名前を呼ぶのと同時に頭の上に柔らかい温かい感触を感じ、

私は先生を見上げようとした。




其処には先生の大きな右手が私の頭を優しく撫でていて

恥ずかしくて、くすぐったくて。



・・・でもひどく、ほっとした。






「私は鈴の方が好きだから、いつも君じゃなく鈴を連れて歩いていると思っているのかい?」




「いえ、そんなんじゃなくて・・・!!」







先生が私たちを比べたり、そんな事をする筈がないのはわかってる。




・・・これは単なる子供じみた焼餅、だから。






「ただの・・・その
・・・焼餅、です・・・






私は俯いて小声で言った。



小声で言ったからって、先生に聞こえていない筈はないんだけど

やっぱり、恥ずかしいから。






「・・・




「せっ、せんせっ・・・!?」







先生が、私を抱き締めていた。







「私が君を外へあまり出さないのは、心配だからだよ」



「え―――――」



「変な輩に連れ去られたり、怪我をさせられては困るからね」




「先生・・・」



「だから、しばらくはこの屋敷の中で―――」







私だけのもので、いてくれないか?







「・・・はい」







そりゃあ街も歩いてみたいけどね

ずっと一緒にいたいけどね

でも。




先生がそう望むのならば、仰せのままに。




ずっと、ずっと貴方だけのものでいたい。

















終・・・!!

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ついにマロにまで手を出してしまいました、うーわぁあああー;;;(冷汗ダラダラ)

最近Miaの中で、先生の株が急上昇中であります。笑

跡部=シーモア=吉田先生=諏訪部、の公式ですよ奥さん(死)

「お前の好きキャラ諏訪部が声当ててるのに偏ってねぇ?」ってツッコミはナシですv(撲殺)

っていうか先生の口調鈴の口調共に99.9パーセント間違ってそう・・・!!(痛ァー!;)


平成壱拾六年五月弐拾参日 Mia拝。

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