「ねぇ吉田先生、今日は雨が降ってるね。
・・・先生、空が泣いてるよ、先生」
「・・・」
「私、雨の日って嫌いじゃないんだ。だって風情があるでしょ?
それに、何だか私の中の汚いもの、落としてくれるような気がするの・・・ねぇ、先生」
「・・・」
「・・・、そいつは膕だよ」
初めて鈴が膕を連れてきてその姿を見た日から、
はずっと吉田に良く似た膕を「先生」と呼び、
返ってこない返事も気にも留めずに話し掛ける日々が続いていた。
鈴が大和屋の主人となってから数日経ったある雨の日。
中庭がよく見える部屋で、は膕の隣に座り、
相変わらずの様子でざぁざぁと降り注ぐ雨を眺めていた。
「鈴は黙ってて。やーよね、先生。
鈴ってばいつも邪魔しに来るんだから」
「・・・」
「・・・、本物の先生はこっちだってば」
そう言って、鈴は自分で抱いていた“先生”をに見せ、
しょうがないなぁいうような表情でに笑いかけた。
「馬鹿ね、鈴」
はそう一言呟くと、隣に腰を降ろしていた膕に擦り寄って鈴の方を見た。
「先生はちゃんと此処にいるじゃない、私の隣に」
膕の右腕に自分の手を絡ませ、は誰に対するでもなく
虚ろな瞳で、笑った。
「・・・くす」
「・・・なぁに?」
「ってば、随分と壊れちゃったんだね・・・俺と同じくらいに」
「・・・壊れてなんかいない」
「・・・そう。」
「私は何も変わらないじゃない?好きな人の側にいて何が悪いの?」
「・・・」
「あっちへ行って!!」
少し語気が早まったかと思うと、次は立ち上がり凄い剣幕で鈴に怒鳴りかかった。
吉田の死後、は些細な事でもすぐに声を荒げるようになっていた。
例え相手が使用人であろうと鈴であろうと、一度気が高ぶると中々落ち着く事が出来ない。
それは、自分の愛する人の死が残された者にどんな影響を与えるかを示していた。
「――――――失礼します若旦那様、越後屋様がお見えになりました」
「そう・・・今行く」
が鈴に思い切り叫んだ直後、
使用人がまるで頃合を図ったかのように障子越しに鈴への来客を告げた。
「脳、おいで」
鈴はそう部屋の隅で座っていた脳に声をかけると、
たたっと寄ってきた脳に“先生”を渡して立ち上がる。
「・・・じゃあまた後で、」
「・・・」
鈴は返事を返さないで膕の着物を掴み俯くを背に、部屋から出て行った。
部屋に残されたのはと膕、それに脳と頭。
しばらく部屋には無言の時が流れ、依然弱まる気配もない雨音だけが鳴り響いていた。
「・・・っく・・・・」
「にゃー・・・?」
雨音に混じり、小さく聞こえる嗚咽。
消え入りそうな声で、は肩を震わせ泣いていた。
「・・・鈴のばか・・・」
「・・・」
「・・・そんなの、言わなくたって知ってるんだから・・・」
「・・・」
「ばか、ばか、ばか・・・」
「・・・」
「ひ・・・っかがみ・・・っ」
「・・・?」
「膕が先生じゃない事くらい、私始めからわかってたもん・・・っ・・・」
の瞳からはたくさんの涙が、外の雨にも負けないほどに流されていた。
最初から、わかっていた
あの人はもう、戻らない事も
目の前にいるのは膕だって事も
わかってたよ、先生
ただ、・・・認めたく、なかった
貴方が死んだ、その事実を
「誰もっ・・・誰かの代わりになんか、ならな・・・っ、」
の言葉を遮ったのは、膕の大きな手。
膕の右手が、の頭の上に乗せられていた。
「・・・ひかが・・・み・・・?」
「・・・」
「っ・・・うわぁああああん・・・!!!」
は膕の着物に顔を埋め、声を上げて泣いた。
思えば、声を上げて泣く事などあの時以来、ずっと無かったかもしれない。
膕は幼子のようにただ声を上げて泣くを黙って見つめ、そっと背中に手を添えてやった。
「っ、ごめんなさ、ごめんなさい・・・ッ」
「・・・」
「膕・・・」
雨音
君の声
重なって
貴方は何処へゆくのですか?
私を置いて、死出の道へと
でも・・・大丈夫、心配しないで
もう一度だけ、歩けそうな気がするんだ
逃れられない現実と、向き合えそうな気がするんだ
終
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何でしょうコレ・・・暗・・・暗ッ・・・!!!;
私ギャグとか甘の方が好きなんだけどなぁ。
自分で書くとどうしてこう暗い路線にばかり進んでしまうんだろう・・・イヤン。。
ってか誰夢よ結局・・・!!(黙らっしゃい)
設定は「月飼い」と同じで。
膕好きなんですけど何気に・・・(爆)
体に傷がある人って好き。(変なフェチ)自分もあるしね。はははー!(ヤケだなコレ)
Miaの中で膕のポジションが樺地とかぶっています・・・(爆死)
だって一言一言でしか喋らないし・・・主従な関係だし・・・でっかいし・・・(何)
とにかく本当ごめんなさい。。。あわわ
脳内妄想が過ぎましたな・・・;(滝汗)
次はもっと明るい話が書きたい・・・です;(大和屋ファミリーで明るい夢って・・・)
平成壱拾六年五月参拾壱日 Mia拝。
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