「先生ぇ・・・」

「どうした、ピノコ」

がなんだか元気ないのよさ・・・」

「・・・何?」

「なんか朝からどよーんってちてて・・・

 ごはんも食えたくないっていって部屋にとじこもりきりよのさ」

「・・・」









ここ最近の様子がおかしいのは知っていた。

少し塞ぎ込みがちで、話し掛けても反応が遅い。

心配したものの体に悪い所はないし、思春期の年頃の娘にはよくある事だろうと

ブラックは思い、あまり口には出さなかったのだが。。









「・・・どれ、の部屋にでも行ってくるか」

「ちゃんとのこと治ちてよね、先生!」

「ああ、わかってるさ」









そう言って診療室の椅子から腰をあげ、の部屋へと向かう。

廊下の先を進み、に与えた部屋のドアの前に立って

コンコン、と少し控えめにノックする。







「・・・?」







返事はない。







「・・・入るぞ?」







キィ・・・と音を立てて扉が開く。

足を踏み入れたブラックの視線の先には、ベッドに突っ伏すの姿があった。







「どうした?気分でも悪いのか?」

「・・・」

「言わなきゃわからないだろう?」

「・・・なんでも、ない・・・」







力ない声だったが、ブラックは返事が返ってきた事に

いくらか安堵した。








「何でもないわけないだろう?そんな閉じこもって、食事も摂らないで」

「だいじょうぶだよ・・・」

「大丈夫なもんか。診てやるから、起きなさい」

「・・・ほんとに、平気だって!」

「・・・








の体を起こさせようと伸ばした腕を振り払われ、

困ったように彼女の名を呼ぶ。

おかしい。

こんな事は今まで一度もなかった。









「なぁ・・・頼むよ」

「・・・」

「心配なんだ、

「・・・」








子供に話し掛けるような、できるだけ柔らかい口調でに声をかける。

それでもは一向にブラックの方を向こうとする気配はない。

相変わらずベッドに突っ伏したまま、頑なに顔を上げようともしない。









(一体、どうしたというのだ・・・)









さすがのブラックでも、の心中はさっぱりわからなかった。

のベッドに腰掛けたまま、原因に考えを巡らせている。








(・・・待てよ?確か明日は――――――――)








「明日はお母さんのお見舞いに行く日、だったね?」

「―――――――――――!」








その言葉に、がぴくりと反応した。









「何か嫌な事でもあるのかい?」








明日は三ヶ月に一度、が精神病院に入院している母親に面会に行く日だ。

三ヶ月に一度母を見舞いに行くというのは、

父の死後彼女の実質的な保護者となった本間丈太郎が決めた約束事だった。

ブラックはそれまで、はその見舞いに行くのを楽しみにしていると思っていた。

ブラックははたった一人の肉親となった母を愛していると思っていたからだ。

そうじゃなくても、母親というものは子供にとって特別な存在であると彼は思っている。



しかし、それは違ったようだった。

は明らかに自分が抱いている母親への思いとは別の感情を抱いているようだった。

恐らくそれは深く、暗く重い感情なのだろう。

一瞬だけ自分の方に向けられたの瞳が、それを物語っていた。










「・・・、そうなんだな?」

「・・・先生には、関係ないじゃん」

「関係ないことなんかあるもんか。代理といえど私はおまえの保護者だぞ」

「・・・しらないもん、そんなの」

「まぁ、その前におまえの恋人なんだがな?」

「―――――――――っ、せんせ・・・!!」









ブラックが彼女の肩に手を置きそう言うなり、

はブラックに抱き着いて泣き出した。

しばらくブラックはそのままを抱きしめて彼女が落ち着くまで黙っていた。

の嗚咽だけが、ふたりきりの部屋に響いていた。









「・・・そろそろ大丈夫か、?」

「・・・ん、うん」








の肩の震えが治まったところで、ブラックは彼女の様子を見ながら

ゆっくり問い掛けた。









「済まない、泣かせるつもりはなかったんだが」

「ううん、先生。私が、黙ってたのがいけなかったから・・・」

「・・・」

「先生には、言っておくべきだったね」











涙で赤くなった目を上げ、ブラックを見て少し悲しそうに微笑むと、

は静かに語り出した。










「私、はっきり言うと母は嫌いなんです。

 昔からあの女は、私のお父さんの事しか頭になかった。

 お父さんに依存して、生きてるような女だったから」

「――――――――――」

「父が生きてた時だって、ほとんど病気だった。

 私の事なんかお構いなし。私が父と話してるのを見ただけでも、

 ヒステリーを起こしてたわ」









―――――――――――『ちょっとあんた、あたしの旦那と何喋ってるのよ!!』

―――――――――――『落ち着けおまえ・・・じゃないか、娘だぞ』

―――――――――――『知らない、こんな小娘知らない・・・!』

―――――――――――『馬鹿な事を・・・さあ、部屋へ戻るんだ』

―――――――――――『うう、あなた・・・』

―――――――――――『さぁ、も部屋へお戻り。あとはとうさんに任せて・・・』












「お父さんが死んでからは私の顔を見るだけで狂ったように泣き叫んだ。

 『あんたのせいよ、あの人が死んだのはあんたのせいよ』って、何度も殴られたわ。

 とにかくろくな思い出なんてないわ。あの女の事で」

・・・」

「あんなの母親じゃない。血が繋がってるなんて、思いたくもない

 ・・・できるなら、この体を全て取り替えてあの女との繋がりを消し去りたいくらい・・・!!」









ギリ、と拳を強く握り締める

爪が食い込んで少し血が滲んでいる。

それほどまでに、彼女の母親への憎悪の念は並半端なものではなかった。










「そんなに悲しいなら、いっそ死ねばよかったのに――――――――!!」

!!」

「あ・・・ごめん、なさい・・・」









ブラックが声を荒げて咎めるように自分の名を呼ぶと、

はビクッと体を緊張させて、そう呟いた。









「・・・いや、・・・俺こそ」

「・・・」









部屋に再び沈黙が訪れる。

もブラックも、言葉を失ったまま数分が経った。










「・・・ま、そういうわけで行きたくなかったんです、病院に」










先に沈黙を破ったのは、意外にもの方だった。

単純でしょ?と言いながら、笑っている。

・・・もっとも、無理に笑おうとしているのは誰の目にも明らかだったが。










「・・・本間のおじさまもひどいよねぇ、私が会いたくないのをわかってて

 あの約束を決めたんだから」

「・・・本間先生はすべてわかってて、そう決められたんだろう」

「あはは、何それ?」

「たった一人の母親だろう?だからこそ、いつか分かり合えるようになって欲しかったんだよ」

「・・・だから、あんな人もう私のお母さんなんかじゃないって」

「おまえがいくらそう言ったって、おまえの母親がその人である事は変わらないんだ」

「っ・・・」










(・・・少し、強く言いすぎたか)









がまた再び黙りこくるのを見て、ブラックは少し後悔した。

いつもは冷静なはずのブラックも、今日ばかりはその影もどこかに行ってしまったようだ。

彼が一度も抱いた事のない感情――――――母への憎悪。

自分を庇って重傷を負い死んでいった母を思い出す。

かつての母の手は温かく、自分を何よりも愛してくれていた。

そしてその後の『憎しみ』という感情は、重傷を負った自分達を捨てて

海外へ行ってしまった父へと向けられていたのだった。









(・・・確かに、俺にも殺してしまいたいほどあの父を憎んでいた時期もあった)









怪我が治ってからも、ブラックはその復讐心だけを心の中で滾らせて生きていった。

大人になるにつれ、その感情もだんだん落ち着きを取り戻していったものの、

やはりその恨みぬいた心は忘れ得なかった。

だがやはり父が死んだとマニラの裏通りで聞かされた時は、

一瞬だけれども悲しみの感情が自分の中に生まれたのを覚えている。









「・・・だけど、もう」

「・・・?」

「あの人の所へ行っても無駄なんだよ。会わない方が、お互いに良いの」

「・・・、」

「わかってる、行けって言うんでしょ?だけど私、私・・・」










ぽたり、とシーツを握り締めるの手に、涙が落ちた。










「行ったってどうしようもないのよ、ますます気が変になっちゃうわ・・・」

・・・!」










こわい、とそう一言、小さく呟いた。

ブラックはそれ以上もう何も言わなくていい、と言うかのように

の体を引き寄せ、きつく抱きしめた。










「そんな事、あるもんか」

「・・・け、ど・・・っ・・・」

「・・・なぁ、。おまえには、母親がいるだけまだ幸せなんだよ」

「え・・・?それってどういう――――――――」









が問い掛けようとした言葉は、キスで塞がれてしまった。

突然のキスに驚いたが、深く重ねられていくにつれの心情も次第に落ち着いていった。

優しく、ゆっくりと味わうようなくちづけに、も舌を絡めて応える。










「・・・はぁっ・・・」

「・・・落ち着いたか?」

「・・・もう、先生・・・。」









ようやく長いくちづけから解放されて、大きく息を吸う。

ブラックはそんなに笑いかけ、も少しいつもの調子を取り戻して微笑んだ。











「・・・無理に行けとは言わない。だけど、――――――」





「先生、明日空いてますか?」





「―――え?」










ブラックの言葉をさえぎり、がまっすぐに彼の目を見て言った。










「空いてる、が・・・」

「・・・一緒に、行ってもらえませんか?」









少し気恥ずかしそうに、けれどしっかりとした口調では確かにそう言った。








「・・・

「・・・ほんとは一人で行かなきゃ意味がないのはわかってるけど、

 やっぱり不安だから・・・じゃなきゃ、途中で逃げ出しちゃうかもしれないから」

「・・・」

「もし行けたとしても、そのまま帰ってこれなかったら、困るし」

「・・・」

「・・・だから、ね・・・だめ、かな・・・?」








『これが、今の私の限界の勇気だから』と、付け足す

そしておずおずとブラックの顔をのぞき込んだ。








「ああ、行こう」








ブラックの答えに、の表情が明るくなる。

ブラックもそんなを見て、軽く微笑んだ。

そして、二人の影がまた、夕闇の中で重なった。
















あなたとなら歩いていける

どんな明日も、過去だって

弱い私を見捨てないでいてくれた

闇の底からすくいあげてくれた

その 優しさに



...HOWEVER...




















オオオオワレェエエエエエエ・・・!


後書き≒言い訳
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どうもこんばんわMiaでつ・・・ぎゃーなんだこれ!暗ッ暗ッ暗ッ!!(ガクブル)

こんなのアップしてスミマセン・・・!!(滝汗)

今回は設定編リターンズ、ヒロインの母への思いというかなんというか。

この設定はBJ夢でヒロイン考え出してた頃からあったので、形にはしたいネタだったのですが。

ものっそい意味不明なキモイ文になりましたね・・・orz(むしろいつもの事)

過去の回想とか、もっとうまく書けや自分・・・。

しかも無意味に長い。むしろキモイ。キモイキモイキモイキモイ・・・∞

キモイしか言えなーいもう!

そして曲ドリっていうんですかこれ。

昔一回ピスメでやった気がしますが。

本格挑戦ははずめてです。GLAY最高だー。(何カミングアウトしてんの)

設定編は今後「HOWEVERシリーズ」って事で行こうと思います。ええ突発ですとも。(死)

とりあえず先生はマザコンだと思いま(殴)ゴハァッ

まぁそんな先生が好きさ!ロリコンともマザコンとも言われようとも(誰も言ってません)

愛ラビュー!(星に帰れよ)


04・11.11(ポッキーの日さ!)Mia拝。

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