「いッ・・・いやぁああああーッ!!!」

「!?」




















弱 点




















部屋に戻って宿題をしているはずのの部屋から、

突然彼女の悲鳴が聞こえた。

もう夜も遅く、もし不審者などがを襲おうとでもしていたら・・・

そんな心配が彼の脳内を駆け巡り、ブラック・ジャックはすぐさまの元へと駆けつけた。










「っ、どうした!?」

「せっせっせ、先生ぇ〜・・・」










バタン、と勢いよく扉を開けての無事を確認するブラック・ジャック。

は彼の姿を見るなり涙目になりながらへたりと床に座り込んだ。










「大丈夫か、何があった!?」

「くっ・・・」

「く・・・?」

「蜘蛛、がぁっ・・・!」










半泣きになりながら震える指で窓の方を指す。

の指した指の先には、3センチ程の蜘蛛が、窓のさんの辺りを這ってた。

と窓の蜘蛛を見比べ、ようやく事の次第を理解するブラック・ジャック。

とりあえずの所へ歩み寄り、手を貸して彼女を床から立たせ、ベッドの上に座らせた。










「何もおまえさん、あんな蜘蛛くらいでそんなにビビる事はないだろう」

「蜘蛛くらいって・・・ひどい、本当にびっくりしたんだから!」










そう苦笑するブラック・ジャックを前に、は憤慨した様子で抗議する。

たかが蜘蛛で・・・と言われればそこまでだが、はとにかく虫の類が苦手なのだった。

例えブラックにあんな蜘蛛くらいで、と言われようとも、にはとてつもないダメージだった。










「あんなもん、ちょっと払えばいいだけじゃないか」

「無理無理無理っ!っていうか先生、お願いだからアレ、何とかして・・・!」

「ったく、まだまだおまえさんも子供だな」










ブラック・ジャックはやれやれ、と言いながらティッシュで蜘蛛を掴み、ひょいっと窓の外へ放り投げた。

その様子を見て、ようやく落ち着いた表情を見せる。

窓をしっかり閉めたのを確認すると、ありがとう、とブラック・ジャクに告げた。















「ほんっと私、虫だけは駄目なの・・・ごめんなさい、夜なのに大きな声出して」

「何事かと思ったけどな・・・まぁ、あまり気にするなよ」










しゅんとして謝るに、彼女の隣に腰を降ろしたブラック・ジャックは優しく微笑んで頭を撫でた。

その温かい感触に、嬉しそうな顔を見せる。










「おまえさんが虫が嫌いだとは、知らなかったよ」

「あはは・・・ごめんね、驚かせて」

「いや、おまえさんの苦手なものがまた一つわかったからね。

 嫌いなのは蜘蛛だけかい?」










そう問い掛けるブラック・ジャックに、今度は逆にが苦笑いを浮かべながら答えた。










「・・・蟻も蝶もてんとう虫もカブト虫も、ぜーんぶ駄目」

「へぇ・・・」

「特に蜘蛛なんてさ、糸出すんだよ?

 昔蜘蛛の巣を手に絡ませちゃったことがあってさ・・・水で流しても流しても取れないの、ほんと最低」










はぁ、と溜息混じりに話すの様子を見て、それは災難だったね、と

フォローを入れるブラック・ジャック。










「先生は苦手なものとか、ないの?」

「俺の?」

「うん。だって何か、私だけ弱点バレちゃったのって、悔しいし」










そう悪戯っぽく笑いながら、ブラック・ジャックの顔を見上げる。

そんな彼女に、少しだけ考える様子を見せてブラック・ジャックが答えた。










「・・・俺に弱点なんかないね」

「えー?」

「まぁ強いて言えばおまえさんの泣き顔くらい、かな」

「なっ・・・っていうか、私先生の前で泣いてなんかいないし!!」

「そうか?さっきだって今にも泣きそうだったぞ?」










頬を赤く染めてブラック・ジャックに反論する。

そんな彼女の様子を意に介する事無く、ブラック・ジャックは笑ってあしらった。

余裕たっぷりのブラック・ジャックの姿勢に、は悔しそうな顔を見せる。










「先生の気障」

「の泣き虫」

「・・・。」










嫌味っぽくそう言っても、ブラック・ジャックから返ってくるのは余裕の返事。

これ以上この人相手に反論しても無駄だ・・・そう思ったは、諦めてもう何も言わない事にした。















「あれ・・・そう言えば、先生」

「ん?」

「着替え途中だった?」

「・・・ああ、そう言えばそうだった」










ふとブラック・ジャックの方を見たは、彼の衣服がいつもと違う事に気がついた。

ベストを脱ぎ、リボンも外し・・・シャツのボタンも、上の方がいくつか肌蹴ていた。










「着替えようとしていたら、の悲鳴が急に聞こえたから・・・」

「そっか・・・ごめんね、先生」

「ごめん、はもうなしだぜ?」

「ん・・・ありがとう」










ブラック・ジャックのその言葉に、嬉しそうに微笑んでそう返す。

そんな彼女を見て、ブラック・ジャックも満足そうに微笑んだ。










「・・・あ」

「ん?」

「・・・な、何でもない」










の目に飛び込んできたもの。

・・・それは、ブラック・ジャックの鎖骨の辺りに散らされた赤い痕。

言うまでもなくそれはキスマークで、昨夜がつけたものだった。

それを思い出し、思わず赤面する。

その事に気付いたのか、ブラック・ジャックは面白そうな笑みを浮かべた。










「あぁ、これか・・・」

「・・・見なきゃ良かった・・・」

「どうして?」

「恥ずかしいもん」

「つけたのはおまえさんだぜ?」

「あの時はそのっ・・・流れって言うか勢いって言うか!」










顔を真っ赤にして、彼の首筋からは目を逸らして話す。

改めて明かりの下でその痕を見ると、やはり羞恥心が増した。

そんな彼女に、わざとオーバーな物言いで相手をするブラック・ジャック。

をからかって、その反応を楽しんでいるのは明らかだった。










「ひどいな、傷付いたぜ?今の言葉」

「〜〜〜っ、先生の意地悪っ・・・!」





「・・・気に入ってるんだけどな、これ」





「え・・・?」

「俺がおまえさんだけのものだって言う、証しだろ?」










・・・自分の負け。

勝ち誇ったように言うブラック・ジャックを前に、はそう思った。

彼のその言葉に、心臓がどくん、と反応する。

それと同時に、彼の首元の赤い痕に目が釘付けになった。










「・・・じゃ、俺はそろそろ行くよ」

「えっ・・・?」

「早く宿題終わらせないと、だろ?

 さっさとやって寝ないと、寝不足になるぞ」

「・・・うん、そだね」

「」










そう名前を呼ぶと、彼女の顎を引き寄せて軽く口付けた。

そして顔を伏せたかと思うと、今度はの首筋に、唇を寄せる。

少し痛いくらいに吸いつけて、自分と同じ赤い痕を残した。










「おまえさんも、俺だけのものだからな」

「・・・っ、先生っ」

「じゃ、おやすみ」










そう言って軽く彼女の頭を撫でるとベッドから立ち上がり、

ブラック・ジャックは部屋から出て行った。

ベッドの上に残されたは、先程よりも何倍も頬を赤く染めて。

ぼぉっと彼の後姿を見送った。










「・・・おやすみ、なさい」










もう閉まったドアに向かって、そう一言、呟いた。

彼に聞こえたはずもないけれど、言葉にするだけで満足だった。










「私の弱点って、結局は先生・・・か」















虫よりも、勉強よりも、何よりも。

結局私は、あなたにだけは敵わないみたいです。




















fin.


42000hitキリリクで凛さまに捧げるBJ甘夢でした。

・・・ 甘 い で す か・・・?(泣/聞くな!)

いつもながら糖度が自分ではよくわかりません・・・(爆死)

うちの先生はヒロインさんをからかうのがお好きなようで。

あああああ、本当ごめんなさい・・・(ノД`);"。.+:*

凛さま、キリ申告誠に有難う御座いました!

こんな拙文ですが、受け取っていただけたら幸いです。


2005.02.21 Mia